《めてみみ》東南アジアの中国企業

2020/05/13 06:24 更新


 中国の海関総署が発表した4月貿易統計速報によれば、織物用糸・繊維製品(紡織品)輸出が前年同月比56.0%増と、3月の3.1%減から大幅の増加に転じた。前月比で59.1ポイントも上昇したことになる。今年から貿易統計も春節(中華圏の旧正月)の影響を排除するため、1~2月の数値がまとめて発表されるようになった。春節に新型コロナウイルスの影響も加わり、紡織品の輸出額は18.7%減だった。

 中国のコスト増により、衣類生産は東南アジアに移転している。ただ原材料は大部分を中国製に頼っているのが現状だ。そのためベトナム繊維協会(VITAS)は、3月末までは生産を維持できるが、3月に中国、日本、韓国から十分に素材が輸入できなければ、4月から原材料不足に陥るとの見通しを示し、インドに代替素材を求め調査団を派遣していた。

 中国国家統計局によれば、1~3月期の織布は前年同期比31.1%減、規模以上の紡織業の工業増加値も16.8%減と厳しい状況だった。東南アジアで衣類生産をする企業の中には中国企業も多い。東南アジアでの産業チェーンを維持することが中国企業にとってもメリットが大きいとの判断もあり、優先的に輸出したのかもしれない。

 ただ、ここにきて世界的に衣料消費が落ち込んでいるため、5月以降の動向は不透明だ。



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