《めてみみ》誰に何を

2020/02/14 06:24 更新


 富裕層の消費は増税後も堅調なようだ。ある百貨店では、時計・宝飾品は駆け込み需要と反動ともに大きく減収が続いているが、特選衣料雑貨と言われる高額ファッション商品は早々に増収に転じた。担当者は「支払いにおけるマインド的影響はあったものの外商顧客の購買意欲は変わっていない」と話す。

 不要不急な消費を抑制せざるを得ない家庭がある一方で、十分な可処分所得のある富裕層は「欲しい物は購入している」のだ。時流や季節感のあるファッションはなおさら。外商顧客には「事前に要望を聞いて良い物を提案する」仕組みがあることも大きい。「誰に何を」が明快なら、購入に結びつく確率は高くなる。

 外商顧客を主力とする別の百貨店の自主編集売り場も今秋冬、コートの売り上げを伸ばした。防寒物ではなく、ファッション商品として打ち出した比較的高額なコートが売れたという。流動客ではなく、「顔の分かる」顧客に対応した仕入れが実った。来秋冬物の海外直接買い付け品の発注は終えたが、顧客は見えている。

 可処分所得の多寡は大きな壁だ。しかし、「誰に何を」を明確にした作り方、売り方は富裕層だけに通用するものではないはず。確実な需要が見込める商品と顧客の組み合わせを少しずつでも増やしていくことは、中間消費者層でも有効な手ではないか。



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