物作りの現場の門をたたく若者は希少な存在かもしれないが、全然いないというわけではない。悩みながらも地域に根付き、企業にとってなくてはならない人材に成長する若手も出てきた。先日、東京で開かれた「第7回全国アパレルものづくりサミット」(「日本発ものづくり提言プロジェクト」実行委員会主催)での現場からの実例報告でも地方に移住して働く若い世代からの発言が心に残った。
佐藤繊維(山形県寒河江市)のニット部営業課課長の齋藤愛さんは「仕事以外でも神輿(みこし)担ぎやおいしい物の食べ歩きなどプライベートの時間も大切にし、地元のコミュニティーにも参加することで地方での生活が充実した」とリアルな状況を語った。
志はあっても継続するのは難しい。慣れ親しんだ都会の生活から友人も知人もいない地方都市の物作り企業に就職した若者にとって、やりがいを求めて自ら望んで飛び込んだ仕事といえども、それだけでは厳しく、離職してしまう人も多いという。
ただ、苦しい時期を乗り越えた先には、若い世代が活躍できる場があるはずだ。これからの時代、ローカル発の小さなファクトリーブランドであっても唯一無二の技術で世界を魅了する可能性は大きい。未来に向け、グローバルニッチを狙った新たな成長を担えるのは、地方で働き続ける若い世代なのだろう。