《めてみみ》ローカルの可能性

2019/09/24 06:24 更新


 専門店は別の店が同じエリアで同じブランドを扱うことを嫌う。競合を避けるため、多くのブランドは卸し先を地域で1社に絞っている。その結果、有力店のひしめく大都市では入れたいと思っても、すでに他の店が押さえていて、新規の取引は難しいことが多い。

 地方ではどうか。都市部を離れると有力な競合店はなく、バッティングは少ない。売る力があれば、入れたいと思うブランドを揃えやすい。

 店の世界を表現するのは内外装や販売スタッフに負う部分も大きいが、やはり主役はセレクトされた商品。必要な商品がなければ店独自の表現は成り立たない。地方都市の中心街から少し離れた立地で、新しい有力店が育っているのはそうした理由もあるのだろう。

 情報を得る手段が限られていた時代は、目的を果たすために店の集まる都市中心部で、たくさんの店を回る必要があった。今はSNSで、店から発信した情報は広範囲に伝播(でんぱ)する。客のニーズにヒットすれば目的の店と認識してもらえる。移動が車なら立地は問わない。むしろ郊外の方が走りやすい。客数は少なくても、明確な目的を持って来店する1人の客は、何十人ものふり客に匹敵する。

 人の集まる場所に店を構える利点は薄まっている。ローカルな立地にブランドセレクト力と情報発信能力に優れた新しい名店が増えそうだ。



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