《めてみみ》グンゼの礎

2019/08/28 06:24 更新


グンゼ博物苑

 グンゼ発祥の地である京都府綾部市には、同社に関係する施設が多い。新旧の綾部本社は、歴史的建造物として今も保存、活用されている。14年には大正時代の繭蔵を改造したグンゼ博物苑のほか、グンゼ記念館、バラ園や特産館などを集めた「あやべグンゼスクエア」が開業。地域の観光拠点としても人気だ。

 同社の歴史は、創業者の波多野鶴吉氏を抜きに語れない。綾部の蚕糸業およびグンゼの礎を築いた実業家としてはもちろん、教育者として名高い。特に女性従業員を〝女工〟と呼ばず〝工女〟として、熱心に教育したことで知られる。

 スクエア内には、鶴吉氏の社宅の一部を移築した「道光庵」がある。道路脇の石碑にも同氏の功績が記されている。先祖は、戦国時代に周辺を支配した豪族の波多野一族らしい。一族は明智光秀と3年近く戦った後に滅亡する。来年のNHKの大河ドラマは明智光秀が登場するが、ドラマの中でも波多野一族はかなりクローズアップされるのだろう。

 インナー業界の経営環境は厳しさを増すが、同社のアパレル事業の4~6月期は増収増益。「差異化商品の強化」という量から質への転換が着実に数字に表れた。経営や商品戦略だけでなく、地域との共生、積み重ねてきた歴史の重みなど、数字に見えない大きな財産が貢献しているのも間違いない。



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