「エコシステム」や「ビジネスエコシステム」という用語をよく見聞きする。「生態系」の訳語だ。自然界が多様な要素によって適切な環境を維持しているように、ビジネス(事業)でも、分業や協業により共存共栄できる生態系を構築しようとする考え方だ。
パソコンの基本OSをベースにした機能開発がエコシステムの事例として多く取り上げられ、プラットフォーム的な意味合いが強い。私たちの業界では、共通ポイントなどを軸とした消費者の利便性を高める「循環型のビジネスエコシステム」を掲げる企業や「機会ロスや在庫を極小化する」サプライチェーンの構築を目指す企業などがある。
エコシステムに対する考え方には、多少の違いがあっても、自社単独での持続的な事業成長は困難と見ている点は共通する。在庫の問題や、川上から川下までの労働力不足などファッション業界全体が抱える課題は、1社だけでの解決は難しい。
たんす在庫の下取りキャンペーンに取り組む企業が増えている。パターンオーダースーツ事業の広がりも機会ロスと在庫を減らす取り組みとも言える。自社でできること、なすべきことを推進しながら、業界に関わる多種多様な人や企業が共存共栄できる「健全な生態系」。これの構築に向けた協調や協業に取り組むべき時期に来ているのではないか。