「インバウンド(訪日外国人)の恩恵のない地方都市の百貨店は厳しい」。百貨店に関わる人の見方は一様だ。地方都市や郊外支店の閉店に歯止めはかかっていない。確かに「傾向」はそうなのだが、地方都市でも増収している百貨店はいくつかある。兵庫県姫路市の山陽百貨店はその一つだ。
同店は15年度、20年ぶりに増収を達成。その後は減収が続いたが、18年度は主要全部門が増収で、大幅営業増益だった。近隣にあったヤマトヤシキ姫路店の閉店による集客増が貢献したことは間違いない。が、「小さなモアを積み上げる」(高野勝社長)取り組みがあっての業績だろう。
「10年以上、売り上げ、利益を少しでも高めるために、一つひとつ丁寧に見直してきた」という。高い粗利が見込める食料品を自前で売る。物産展での買い取り販売や「産直パネル」による受注の実施、備品のリースから購入への切り替えなど〝小さな〟実例は多い。新規ブランドの導入でも粘り強く交渉を続けてきた。今秋に入る予定のブランドは「30戦29敗ですよ」。
地方都市の百貨店は厳しいという「傾向」に対して、革新的な解決策は見えていない。「マクロではなくミクロに購買行動を見ることでこそ打ち手が見えてくる」とは、ある商業施設のトップの言葉だ。小さな努力を継続すれば、いずれ花開く時がくる。