《めてみみ》芯の無い字

2019/01/09 06:24 更新


 12月に上海で書家、経営者らが参加するシンポジウムを聞く機会があった。商業施設、ホテル、事務所棟からなる新たな施設の開設記念に開かれたイベントだ。

 オーナーは改革開放の40年間は文化を軽視してきたとした上で、「新たな施設は芸術や文化を発信できるように工夫を凝らした」とコンセプトを説明した。そしてベテランの書家が、「昔の書は書いた人の人柄が字に表れているが、現在の若い書家は芯の無い字を書いている」と指摘した。その理由は、「体制の下で芸術表現が制限される中で、それに沿った形になっているから」との見方だった。

 日頃出席している繊維・ファッションビジネス関係のシンポジウムと発言内容の質が異なるので少しビックリした。客席にいる半数は、招待者だったが、残りの半数は近隣のごく普通の人々。最後列だったので反応は分からなかったが、会場は静かだった。

 江戸時代後半に活躍した歌川国芳のように、どの時代どこにでも体制を批判したり風刺したりする人々はいた。そして、その時代の文化・風俗は体制とも密接に関係し、芸術分野でも様々な表現が生まれた。シンポに出席した大学教授からは「芸術はコミュニケーションの道具として一番使いやすい」との発言もあった。改革開放から41年目の中国で、どんな変化が起こっていくのか。



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