小売業の価値の源泉は人だ。優秀な人材が集まり、働きやすい環境の整備とともに、生産性の向上が働き方改革で問われている。長時間労働の要因となる会議や書類作成など付帯業務を少なくし、販売現場の負荷を減らすことは経営にとっても重要課題となった。
三越伊勢丹は首都圏8店舗で8月から店休日をなくす。09年から営業時間を短縮し、11年から元日以外の休業日を復活させていた。店休日は2、8月に原則2日ずつ設定していたが事実上、撤回する。取引先からは店休日が「販売員のやる気、満足度が向上した」との評価が圧倒的だっただけに惜しまれる。
杉江俊彦社長は「社員は元々、週休2日制を実施しており、店休日で新たに休みが増えたわけでない。営業することで業績が向上し、給与が増えた方が良いなどの意見があり、従業員が望んでいないならばやめることは選択肢」という。顧客の利便性の向上につなげる考えだ。
店休日の増、営業時間の短縮は百貨店業界として一様でない。取引先の一部は店休日の販売員を他店へ応援に送り出すケースもあった。しかし、店頭で働く販売員が最高なモチベーションでなければ、顧客に対して最高のもてなしができない。一人ひとりのマインドや権限と責任、コミュニケーションを引き出す方向で働き方改革に向き合う必要がある。