《めてみみ》四つの店是

2018/03/27 04:00 更新


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 高島屋の社史を改めて読み返すことになった。創業は江戸時代の1831年にさかのぼる。初代飯田新七が京都烏丸松原で木綿商「たかしまや」を開店し、商人道の精神として四つの店是を定めた。

 第一に確実なる品を廉価にて販売し、自他の利益を図るべし。商いの基本は良い物を安く売ることであり、自己の利益だけでなく、同時に顧客の利益を考えなければならない、という経営方針を掲げる。

 第二に正札掛値なし。当時は「商売の駆け引きは大切にて、買う人により値を異にするが何よりも家業を盛んにする」という言葉もあったほどだが、初代新七は正札販売を貫いた。第三に商品の良否は、明らかに之を顧客に告げ、一点の虚偽あるべからず。値段よりも価値ある商品を提供することで、「売れても売ってはならぬ品」があるという。

 第四に顧客の待遇を平等にし、卑しくも貧富貴賎(きせん)に依りて差等を附(ふ)すべからず。商いでは人を差別したり貧富の差で人を評価してはならないことを厳しく戒めている。いずれも現代の商売に通用する。

 新七の精神はその後の百貨店創成期に、ここでしか手に入らない舶来品を紹介したり、地元でしか買えない名品を集積したり、憧れの商品を実際に買えるようにした先見性として引き継がれた。四つの店是が今の高島屋の顧客中心主義の経営方針を支える。



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