「日本が世界から完全に無視される一方、中国では巨大なマネーが動いている」と海外事情に明るい某紳士服縫製工場の社長。かつて欧米の縫製機械メーカーから日本の縫製工場がアジアで最優先されていた時代があった。ずいぶん昔の話だ。今は日本の縫製工場で最新設備を導入できるところなどほとんどない。
中国では政府による縫製工場への投資が盛んらしい。縫製工場といってもCAD・CAM(コンピューターによる設計・生産)を駆使し、オーダーメイドスーツを量産できる工場だ。縫製業というよりはIoT(モノのインターネット)などIT(情報技術)関連産業としての成長が期待されている。
イタリアの有力服地メーカーから仕入れ、中国の縫製工場で生産し、欧米をはじめとした世界の市場で販売されるオーダーメイドスーツを、世界のどこからでも注文し受け取れる仕組みがITの進化によってできつつある。
ただし、ハード面が整っても、それを担うソフト面に日本の優位性がまだある。特に自分だけの1着を仕立てるオーダーメイドは〝究極の多品種小ロット〟のため、生産・品質管理も高いノウハウが必要。今まで培ってきた強みを生かし、海外企業とどのようなネットワーク、協力体制が構築できるかで未来の物作りも変わる。あきらめるのはまだ早い。