「化粧品と食料品を強化する」。こう話す百貨店が増えている。美と健康や食に対する消費者の関心度が高いことに加え、いずれも〝無くなるもの〟で需要が尽きないことも魅力と見ている。これらの強化は、既存顧客層より若い次世代顧客の獲得につなげることも狙いだ。
日本百貨店協会によれば、食料品は落ち込み幅こそ小さいものの、暦年で見れば3年連続の減収。とくに生鮮食品、グロサリーの前年割れが続いている。デイリー需要への対応を強化するため、地元スーパーや「明治屋」「北野エース」などを導入する百貨店が増えている。
一方の化粧品は6月で27カ月連続のプラスで、暦年では5年連続の増収と好調だ。訪日外国人需要だけでなく、最近は百貨店にとって長年の課題であった20~30代層の購買も増えてきた。ある百貨店が今春、ハウスカードの購買分析をしたところ、化粧品売上高の2割近くが29歳以下。現金客などを含めると29歳以下の比率はさらに高まる。
食品スーパーの導入による来店客数増や来店頻度の向上、化粧品強化による客層の広がりなど、食料品、化粧品の強化で成果を上げているところは多い。もっとも、ファッション部門など上層階との買い回りは依然少ない。百貨店の強みはワンストップショッピング機能のはず。〝売れ筋〟を並べるだけでなく、売れ筋商品を多様にしていくための商品展開力や見せ方、伝え方のレベル向上が欠かせない。