鶴屋百貨店は昨年4月の震災の教訓を生かそうと「熊本地震・復興の歩み」をまとめた。震度7の前・本震で、今なお4万7000人超が仮設住宅での生活を余儀なくされ、熊本城をはじめ文化財や道路、橋などインフラが損傷した。完全復興まで数十年かかるといわれる。
同店は他の商業施設に比べて早期に営業を再開、日ごろの備えと支援の輪の大切さを浮き彫りにした。98年から10年間の耐震工事などで、建物、設備に重大な被害がなかった。一方で「直後の対応に大きな問題を感じた。事前に作成しておいた緊急時対応マニュアルがほとんど用をなさなかった」(久我彰登社長)という。
そのため、地震発生から全フロア営業再開までの道のりだけでなく、その間の気づきや反省を記録した。冊子で最も教訓となったのが、従業員への支援だ。営業再開の準備と並行し、鶴屋で働く4000人との連絡手段としてホームページを有効活用した。会社の状況のほか、従業員の生活基盤確立のための情報提供に努めた。
営業指針は17年度から「お客様と共に」と改め、顧客の役に立つことに全力を尽くす思いを込めた。この1年間の顧客と接した体験談を集めた「とっておきの話」として冊子に残した。「売り上げは震災前の水準に戻った」(久我社長)と顧客に支えられた鶴屋の存在意義を改めて示した。