《めてみみ》安心か、リスクか

2017/06/30 04:00 更新


 バングラデシュ・ダッカでのテロ事件から明日で丸1年が経つ。事件後、同国から日本への衣料輸入が懸念された。今年1~4月の同国からの輸入量は1・2%減、中国、ベトナムに次ぐ5・3%のシェアを維持しているが、16年の26・1%増という伸び率と比較すると減速感は否めない。

 現地に詳しいアパレルメーカーの社長によると、目立った事件こそ起きていないが、しばしば市内の各地で過激派などの掃討作戦が行われているという。地域によるだろうが、出張に伴うリスクは当然ある。本人が望んでも、万一を考える大きな会社ならストップをかけるのもやむを得ないか。

 バングラデシュの国旗は緑地に赤い円。緑は豊かな大地、赤は太陽と独立戦争で亡くなった人の血の色を表すと聞く。色こそ違うが構図は日章旗とほぼ同じ。それもそのはず。国父とされるムジブル・ラーマンの娘で、現在のシェイク・ハシナ首相は14年の訪日時、国旗制定時に父は日章旗を参考にしたと証言している。

 逸話が示す通り、数少ない親日国の一つ。治安面に加え納期や品質などの諸課題はあるにせよ、縫製大国としてのポテンシャルは変わらない。日本が足踏みしている間、中国はトップ外交を含めてバングラデシュとの経済関係を強めていく。安全重視か、一定のリスクを覚悟するか、判断は難しい。



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