「既存店の活性化が重点」。以前はよく耳にしたが、最近はあまり聞かなくなった。活性化よりも不採算ブランドの廃止や不採算店舗の閉鎖の方が優先課題ということだろうか。前向きな投資と言えば、極端に言えばEC関連分野のみ。実店舗への投資を強化するとの声はほとんど聞こえてこない。
本紙5日付の「知・トレンド」面にも掲載したが、経済産業省がまとめた国内電子商取引市場規模によれば、「衣料・服飾雑貨など」の16年の市場規模は前年比10・5%増の1兆5297億円で、EC化率は10・9%となった。EC市場は今後も高い伸びが続くのだろう。とはいえ、実店舗の市場規模の方がまだまだ圧倒的に大きい。
15年度から構造改革を進めてきたワールド。16年度の全社の既存店売上高(EC売上高除く)は下期が1%減、通期では1・6%減となったが、20ブランド以上が増収を達成したという。これは、全ブランドの半数に近い。不採算店舗の閉鎖によるところも大きいが、衣料品の消費低迷が言われるなかでの既存店増収は、商品力と販売力の向上の結果とみている。
作り手、売り手ともにEC事業の拡大は欠かせない課題。しかし、〝オムニチャネル戦略〟を進めるためにも、実店舗の魅力度向上は軽視できないのではないか。ブランドの魅力を伝える重要な顧客接点の場なのだから。