物作りの未来像とは③ 脚光を浴びるミシンのIoT化

2017/07/17 04:30 更新


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《連載 物作りの未来像とは 工場のIoT・自動化③》 脚光を浴びるミシンのIoT化 アジア、中国から高い関心

 衣料品を作る際の最も労働集約型な工程が縫製だ。裁断された生地には様々な形があり、柔らかく、伸び縮みする。それを縫うためにはどうしても人の手や経験に頼る必要がある。しかし、世界最大の衣料品輸出国である中国で人件費が上昇し人手不足が顕在化、新興国においては非熟練工が多く、安定した品質の衣料品を大量に生産することが難しくなってきた。物流コスト削減やリードタイム短縮などのため、生産を消費地周辺に回帰させる動きもあることから、縫製の自動化やIoT(モノのインターネット)化による効率化が脚光を浴びている。

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◆ミシンをつなぐ

 日本でもかつて80年代から縫製自動化などに取り組んできた歴史がある。しかし、当時は比較的日本から近く、人件費もまだまだ安かった中国市場の開拓によってトーンダウンしてしまった。今再び起きている縫製自動化への関心は、中国を始めとした世界的な動きだ。

 こうした動きに対しスマートファクトリー、ミシンのデジタル化、IoT化に力を入れているのがミシンメーカーのJUKI。デジタル制御の本縫いミシン「DDL-9000C」は、送り制御や押さえ圧、上糸張力などをデジタル化することで制御の再現性を実現した。これにより、生地によって簡単に設定を変えられるほか、上手な人が縫ったサンプル縫製のデータを量産に生かすことで品質を確保できる。ミシン自体のネット接続も可能。制御情報を逐次共有できるほか、何回針が動いたかなどもネットワークで確認できるため、生産数量の管理や、針交換の情報を各ミシンに流すなどメンテナンスに生かすことも出来る。

 また、ミシンのネットワーク化に伴い、スマートファクトリーにも注力している。昨年開かれた縫製機器見本市JIAMでは、自動機に加えパーツの供給や完成品の回収を行う自動搬送機も備えたポロシャツのスマート縫製ラインを提案。人員を13人から4人に減らしながら、一人当たりの生産枚数を2.2倍に増やすことが可能になった。

◆IoTの課題とは

 ブラザー工業もデジタル制御のミシンにWi-Fi(無線によるインターネット接続サービス)を搭載し、ネットワーク化するシステムを開発している。縫製機器見本市「テックスプロセス」では、稼働状況や生産数量の自動計測などを実演。生産管理に活用するほか、将来的には双方向のやり取りも可能にしていく方針だ。

 こうしたミシンのIoT対応が進む現状に対して、「今後はミシン以外の機械をどうつなげていくかが課題」と語るのは、JUKIの中村宏上席理事兼スマートソーイング研究所所長。「生地の伸長率やウール、綿など素材情報、縫い糸の情報など複雑な情報が入り乱れる縫製段階において、作業者に負担をかけずにマスカスタマイゼーションを実現するにはデジタル化、標準化は不可欠。CAD(コンピューターによる設計)メーカーやミシンメーカーなどが協力して製品情報規格を作っていく必要がある」として、繊維のサプライチェーン全体で工程間の連携を考えることの重要性を指摘した。縫製工場内だけなく工程間、工場間の連携がよりスピーディーで効率的な生産を実現していく鍵となりそうだ。

 IoT化された縫製システムを使って、どのように最終消費者への販売につなげていくのかという課題が残されてはいるものの、マスカスタマイゼーションや単品生産を目指す上で、こうした最新のミシンが大きな武器になるのは間違いない。新型ミシンの導入も含め、こうした設備投資に対して中国、アジア圏の関心は極めて高い。中国やアジアの縫製業界がIoT化された時に、日本の縫製業は何を武器にして競争力を保っていくのか、その岐路に立たされているのかもしれない。

16年に開かれた縫製機器見本市JIAMで実演したJUKIの「スマートファクトリー」


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