太宰府天満宮は、重要文化財「御本殿」の大改修を開始した。それに伴い、本殿の前に3年限定の仮殿が完成した。仮殿のデザインと設計を建築家の藤本壮介、御帳(みとばり)と几帳(きちょう)のデザインを黒河内真衣子による「マメ・クロゴウチ」が担当した。
今回の大改修は、菅原道真公1125年式年大祭に向けたもの。124年ぶりとなる。漢詩や和歌に秀でた菅原道真は、天神様の愛称で古くから多くの文人や芸術家から親しまれてきた。同宮はその時々の最先端の作品が奉納され、文化芸術の発信地となった。その歴史を未来に継承するために、日本を代表するクリエイターを招いて仮殿建設を進めた。
仮殿のデザインは、青々とした森が屋根を覆っているイメージ。同宮周辺に広がる自然が本殿前に飛翔した様子を形にした。本殿を踏襲した伝統的な作りと現代的なデザインを共存させた新しい作りになっている。
御帳と几帳にも伝統の手法と現代の技術が生きている。御帳には、太宰府を象徴する梅の木が全面にあしらわれ、左右に向かってグラデーションを描く構図は天満宮の生命の広がりを表現している。几帳に用いられたシルクには、境内で育った梅とクスノキの枝や貴重な紫根を用いた古代染織が施され、現代を象徴する化学繊維とともに織り上げられている。
仮殿の完成を記念して、5月13日に仮殿遷座祭が行われた。今後3年間は、仮殿で神事や参拝を行う。