ローカルでいこう④地元愛込め自然体

2015/07/23 06:56 更新


カルチャーでつながる

 「スケートボードがあれば言葉はいらない」という90年代ストリートカルチャーの洗礼を受けた世代が、自分たちの地元からリアルな発信を続ける。

大切な仲間と共に

 仙台のメンズブランド「デリシャス」は佐野弘之氏が専門学校の仲間と立ち上げたデザイン会社、パイルが運営するメンズショップのオリジナルとして3年前にスタートした。デザイン会社では音楽やファッションなどの情報が載るフリーマガジンを定期刊行し、全国のストリート系ショップに配布してきた。

90年代カウンターカルチャーを背景にした「デリシャス」
90年代カウンターカルチャーを背景にした「デリシャス」

米国カウンターカルチャーへの傾倒が強い佐野氏が地元の古着文化の経験もスパイスに服を作る。同店は米国からコアなブランドを仕入れ、自店だけでなく全国へも卸して好評だ。「店のセレクト力がオリジナルのレベルを引き上げる」と強調する。仙台には歴史的な繊維産地もなく、マーケットをリードするような有力ショップが不在だった。「昔、仙台はかっこ悪いと思っていた。今は海外でも地元(ローカル)から発信する時代」。オリジナルのタグに「センダイ」の文字が光る。

 高校2年のとき、スケートチームのTシャツを自作したのをきっかけに服作りに目覚めた鈴木伸忠代表。福島県いわき市で立ち上げたメンズブランド「レミーラ」は全国約60店へ卸し先が広がり、17年続いている。鈴木代表は縫製工場への勤務経験から自らデザイン、型紙作成、サンプル縫製までをこなせる。

「リアルティーを共有したい」とレミーラの鈴木代表
「リアルティーを共有したい」とレミーラの鈴木代表

3年前にフランスのプロスケートボーダー、ソイ・バンディ氏から依頼があり、衣装提供が始まり、ソイ氏のブランドとの協業品も販売した。現在、スケートカルチャーは背景にしつつ、デザインを削ぎ落としたシンプルなカジュアルウエアとしてもファン層は広がっている。「ブランドのリアリティーを追求するため、カタログは自分たちで作り、そのモデルも地元の友人、知人しか使わない」という。地方発の方が価値を共有しやすいのかもしれない。

南国のゆるさ加えて

 東京のブランドで経験を積んだ吉田ロベルト氏が故郷の沖縄県に戻り、今秋冬物から本格的にスタートするのが、ストリート系メンズブランド「オキナワメイド」。ボトムはショーツ中心で、防寒アウターは企画しないなど南国、沖縄での生活を想定した服作りが特徴だ。そのほかにも、日差しが強いのでキャップも20色揃え、Tシャツやポロシャツの色バリエーションにオレンジやイエローなど沖縄の風土に合う色を必ず差す。

(4)沖縄の風土が商品企画に色濃く反映する「オキナワメイド」
沖縄の風土が商品企画に色濃く反映する「オキナワメイド」

ポロシャツのワンポイントにはヤンバルクイナを付け、売り上げの一部を自然保護団体に寄付したりもする。伝統工芸の琉球ガラスにブランドネームを入れたコップも提案する。「地元沖縄の飲食などカルチャーを含めて南国のゆるい暮らしをプロデュースし、発信したい」と自然体で話す。夏には地元、恩納村に直営店を出す予定。(大竹清臣、疋田優)=おわり(15/05/08 19232 号 1面)

繊研新聞には読み応えある連載が



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