レオタードEC企業のサヨリ商店街 染色・縫製を内製

2018/04/28 05:00 更新


《ローカルでいこう》レオタードECのサヨリ商店街(愛媛) 染色・縫製を内製化 価格抑え「3年保証」

 愛媛県新居浜市にあるユニークなEC企業が「サヨリ商店街」。バレエのレオタードやドレスウェアに特化し、千葉小織社長以下、14人の女性社員で運営する。16年にミシンやインクジェット、刺繍機などを導入し内製化に踏み切った。この2年は苦労の連続だったが、習熟度の向上や体制整備が進み、外注時に1カ月要したサンプル縫製は、一気に2、3日に短縮した。今年は首都圏でのアンテナショップや台湾販売なども具体化したい考えだ。

(山田太志)

 千葉さんの経歴は多彩。高知大学理学部を卒業後、自治体職員や国会議員の私設秘書などを経て、90年代末から個人輸入で子供服や雑貨を海外などから仕入れ、ネットで販売した。その後はオリジナルの商品を扱い、04年に法人化も果たす。子育て、そして離婚も経験したが、地元の多くの人にも支えられ社業は比較的順調に伸びた。

品質へのこだわり

 ただ、年を追うごとに競合は激しくなる。何とか特徴を出そうと注目したのがレオタードだった。「発表会で良い商品を着せたい、着たい」思いが強い商品。その割にデザイン・品質が良い商品が少なかった。同社の商品は3980円などが中心で価格も抑えてある。「何よりドレスやカジュアルに比べ送料が格段に安いことも大きな魅力だった」と千葉さんは苦笑する。

主力商品の一つスカート付きレオタード

 品質へのこだわりは強い。国内素材メーカーの素材だけを使い、縫製も国産。早くから下取りサービスを実施し、自社商品の改良に生かした。約5年前からは業界でも極めて珍しい「3年保証サービス」を行っている。周りからは「そんなことしたら、返品の山になってつぶれるよ」と言われたそうだが、結果的に認知度アップに大きく貢献した。

企画の幅を広げて

 消費者からは「肩ひもを5ミリ細くしたい」など様々なニーズが日々届く。時に「発表会に着るウェアが間に合わないか」と緊急の問い合わせも。こうした声を受け、短サイクルの生産を目指して内製化を決断したが、物作りは素人。「ミシンメーカーにレオタードを持って行き、この製品を縫えるミシンを全部下さい」と注文したそうだ。

 ミシンは最初に11台、今はベテランの職人さんやU・Iターンの若手もラインに加わり、20台に増えた。インクジェットは現在2台。昇華転写と溶剤タイプを置くが、これも導入後、他社を見学させてもらいながら説明書を見ながら動かしていった。「物作りがこんなに難しく、お金が掛かるとは思わなかった」。

生産を軌道に乗せるまでは苦労の連続

 しかし、苦労して入れた設備の効果は確かだった。サンプル縫製やデザイン修正の短期化だけでなく、商品企画の幅が大きく広がる。昇華プリントのレオタードはドバイから、今治産タオルにバレリーナを刺繍したハンカチはインドネシアやアメリカからと、海外からも様々な反響があった。

 海外市場は昔からの夢。昨年1月にはジェトロなどが主催したジャカルタのファッション・イベントに出展し、ムスリム衣装や水着を狙ったが、これは失敗。今は台湾向けにサイクリング向けボトムなどを発信中で、かなりの可能性を感じている。

現在の年商は6000万円。楽天が半分強で残りを自社、アマゾン、ヤフーで3分の1ずつ。顧客の60~70%が首都圏のため、早ければ今年中に実店舗を開設したい考え。

 バレエ教室の先生や団体などの受注にも力を入れる。「この2年は体制を固めるのに大変だったが、将来はキラキラ輝く女性を中心に『レオタードならサヨリ』と言われるようになりたい」と語る。

千葉小織社長


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