住・商・文化が共生する中庭空間(吉田恵子)

2013/08/28 15:24 更新


ベルリンでは店が通りに面した処にないことがある。通り面に一つだけ入り口があり、奥に入った中庭部に店が複数あることが少なくない。上階は通常住居やオフィスであり、中庭という半ばプライベートな空間が公にも利用されている形だ。

中庭はドイツ語ではホ―フ(複数ヘーフェ)と呼ばれる。多くは、19世紀末から20世紀前半の建物の間にあり、当時に特徴的なユーゲントシュティール、歴史主義といったレトロで豪華な様式をとる。

東独時代・ベルリンの壁崩壊後は放置されがちとなるが、安い家賃に目をつけたアーティストらがアトリエ等として使用するようになる。1990年代中頃からは本格的に再開発が始まり、住、商、文化がミックスした魅力的な空間に生まれ変わった。

ヘックマン・ヘーフェ(Heckmann Höfe)もそんな中庭空間の一つ。

 


ヘックマン・ヘーフェへの入り口。オラニェンブルガー通り(Oranienburger Straße. )に位置する


住民も観光客も、子供も大人も、ゆったり憩える空間

 


トレンドの発信地の一つであるミッテ地区に位置し、デザイン・文化・ものづくり関連の地元企業が集まる。緑濃き中庭には、レストラン、カフェほか、劇場、宗教専門の本屋、飴工房、地元ファッションブランド直営店、セレクトショップ等が軒を並べる。どのテナントも、趣味の良い内外装で、文化的で創造的な空気を織り成す。

 


ドイツの子供が憧れるツリーハウス風遊び場も


反対側の入り口(Auguststraße)には一瞬目を疑うインスタレーションが(NS Harsha作)


例えば、日本ほか国外にも多くファンを持つフートアップもここに店と工房を構える。

 


HUT upの秋冬コレクション。コレクションが一同に揃うのは同店だけとあり、国外からも顧客が訪れる

 
HUT upのぬいぐるみ


フートアップは伝統的工法に開発を加えたフェルトを素材とするユニークなレディスブランド。ショーウィンドーに飾られたフェルトの服と小物が、古い建物と緑にマッチし、彩を添えていた。

 


イヴォンヌ・シュヴァルツ(HUT up)さん。ヘックマン・ヘーフェの「プライベートな雰囲気」が好き、という。
横はフェルト製ウェディングドレス



フランクフルト在住。身長152cm。大きなドイツ人の中にいると小人のように見えるらしい。小回りだけは利くジャーナリスト兼通訳。ファッションからヘルスケアまでをカバーする。



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