ドイツならでは!究極の外カフェ(吉田恵子)

2015/12/05 11:23 更新



キオスク(右)と外カフェ

 

夏は都会にオアシスを、冬はクリスマス市風暖かみを提供する、今フランクフルトで人気急上昇中のスポットがある。「Fein(ファイン)」である。

フランクフルトの町中の公園を歩いていると、木立の間に、カントリースタイルの居間空間が、こつ然と現れる。キオスク(売店)の横、屋根も床もない所に 、アンティークなアームチェアや戸棚、クロスがかかったテーブル、季節の花を生けた花瓶やアート、芸術・インテリア関連の本・雑誌等が 置かれている。

 


アート

 

週末や夕方には、このいわば屋外リビングルームに、キオスクで売られている手作りのケーキ、クッキー、オーガニック・パンのサンドイッチ、ベジタリアン用ハンバーグほか日替わりメニューといった軽食を嗜みに、近くの住民が集まる 。

 



カプチーノ、エスプレッソほか各種コーヒー、 自家製レモネード、ワイン、ビール、そして冬はドイツのクリスマスの名物、グリューワイン(ホットな赤ワイン)等も用意され、本を読みながら、おしゃべりしながら、店員にせかされることもなく、屋外で気儘に時を過ごすのだ。

外なので当然のことながら、子供または犬を連れていても白い目でみられたりしない。近くに遊び場もあるし、店には子供が好きなグミやキャンディーなども多様に揃えてられている。寒くても長居できるよう、分厚い毛布も用意されている。

 

 


昨年まで同店はごく普通のキオスクであった。キオスクはフランクフルトでは「水の小屋(Wasserhäuschen)」とも呼ばれ、街のあちこちにあり、19世紀 水道水の質が安定していなかった当時は住民に飲料水を、近年は主に簡単な飲食物、タバコ等嗜好品、時には基礎的な日用品等を提供している。

ビール他アルコール飲料が多種置いてあることから、アルコール好きの人々の溜まるスポットにもなりやすく、公園の角という場所も手伝い、同店もその運命を辿っていた。

 

 


そんなキオスクを、元フランクフルト市職員だった エルケ・フィッシャーさんが大改造し、周りにインテリアをあつらえ、この春オープンした。エルケさんは、「若くして子供ができたので、生活のために事務の仕事をやってきたけれど、自分の店を持ちたいという夢をずっと持っていた」。

 


店主、エルケ・レッシャーさん

  

前経営者が同店を手放す機会を逃さず用益権を獲得した。 ドイツには子供がお店ごっこをするためのおもちゃがある。このおもちゃ、まさにキオスクを小さくしたもの。エルケさんはこれで子供の頃よく遊んでいたといい、何十年と暖めてきた構想をファインで実現したわけだ。

 

冬のクリスマス風デコレーション。椅子には分厚い毛布が

 

お散歩、バーベキュー、ハイキングといったアウトドア活動が大好きな ドイツ人 。カフェやレストランでも、太陽が少しでも輝けば、これ以上は耐えられない、という低温になるまでは、人はまずテラス席に座る。

クリスマス市では零度前後の寒さの中「寒くないと雰囲気がでない」などといいつつ、外で飲み食いするのを醍醐味とする。 手作りや、地産、オーガニック、菜食へのニーズが特に高い場所柄でもある。 「ファイン」は、そんな地元民の潜在的ニーズを見事に掘り起こした、といえそうだ。

 


外に絨毯やアームチェアが置かれている



フランクフルト在住。身長152cm。大きなドイツ人の中にいると小人のように見えるらしい。小回りだけは利くジャーナリスト兼通訳。ファッションからヘルスケアまでをカバーする。



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