ベルリンで需要が高まるシェアバイクの実態(宮沢香奈)

2018/12/16 06:30 更新


ベルリンの街の至るところでオレンジやグリーンといったビビッドカラーの”お揃い”の自転車を見かけるようになった。友人から”シェアバイク”の存在を聞いた時は、レンタサイクル同様に”ツーリスト向けのサービスでしょ?”としか思っていなかったが、今では自分自身がユーザーとなっているのだから不思議なものである。

※前回のレポートはこちら

私がベルリンで一番最初に見たのは大手スーパーLidlのシェアバイクだった。今のように競合他社で溢れかえる前のかなり早い段階から導入していたように思う。調べたところ料金は1日15ユーロと街中にあるレンタサイクルとあまり変わらない。しかし、借りた店に返しに行くという従来の面倒なやり取りがなく、乗り捨て出来ることがシェアバイクにおける何よりの利点である。

私が今利用しているのは昨年日本へ参入を果たしたばかりの「Mobike」。中国の北京に本社を構える「Mobike」は、世界最大シェア数を誇ると言われており、確かにベルリンでも一番台数を見るのが、このオレンジ色がトレードマークのMobike社の自転車である。その勝因は、30分50セント(=約65円)という競合他社とは比べものにならないほど安い料金と全てアプリで管理出来るという現代社会に沿った利便性にあるだろう。

利用方法も非常に簡単。まず、アプリをダウンロードし、クレジットカードなどの決済方法を登録。続いて、近くに停まっているMobikeを検索し、見つけたらアプリを立ち上げ、ハンドルの真ん中にあるQRコードを読み取ってロックを解除する。目的地に着いたら近隣に適当に停めて、後ろタイヤにある鍵をロックすれば終了。実際に乗った時間で計算された金額がアプリに表示されるようになっている。

Mobikeのロック部分

Mobikeのロック部分
フロントのカゴ部分

私は現在1ヶ月間乗り放題7.99ユーロというプランに登録しており、最初の30分無料というお試しサービスも付いてくる。ちょっと歩くには遠いけれど電車やバスに乗るほどではない距離、バスがなかなか来なくて待ち合わせに遅れそうになった時、最寄り駅から目的地まで歩くには遠いけれど自転車を持っていない時、などなど利用目的は日々の生活の中でいくらでもある。しかも、歩いていれば必ずと言っていいほどMobikeと遭遇するため探そうと思わなくても簡単に見つけらることができ、乗りたいと思った時にすぐに乗れて、どこにでも乗り捨てられる。この便利さを知ってしまったら自転車を買おうという気が一気に失せてしまった。

>Mobikeのアプリ。走行距離や消費カロリーなども表示される>

何より盗難の心配がなく、メンテナンスの必要もない。ベルリンは自転車の盗難が本当に多く、売店で飲み物を買いたいだけの時でも頑丈で重い鍵をいちいち掛けないといけないため自転車で出掛ける方が億劫になってしまう時があった。銀行に行く際には中まで持って入っていたほどである。そういったストレスからも解放され、気軽で身軽な自転車ライフを送ることが出来ている。

メリットばかりを伝えてきたが、注意点もいくつかあるので伝えておきたい。まず、電動自転車?と思うほど車体が重く、変速が付いていないタイプは早く漕ぐことが出来ないため、長距離には不向きである。他にも椅子の調整に不備があったり、ハンドルがグラグラして乗りにくいのもあるため、ロックを外す前に車体チェックをしないと何度も乗り換えなければならず逆に面倒になってしまう。誰がどんな使い方をしたか分からないのだからメンテナンスされていないのは当然であり、不備があった場合はアプリで報告出来るようになっているため、それほど大きな問題ではないが、乗りやすさに関してはあまり重要視されておらず、もう少し改善の余地があると思っている。

それと、何よりもデザイン性に欠けている。それはMobikeに限ったことではなく、前述したLidlやドイツの「Deezer Netbike」も同様にオシャレとは全く言えない。しかし、ベルリン拠点の「sacoora」のようにロードバイクとスクーター専門のシェアリングサービスなども登場しており、徐々にデザイン性も重要視したメーカーが登場してくるだろうと予想している。

sacooraのロードバイク

DriveNowCar2Goといったドイツ発のカーシェアリングサービスがすでに何年も前に浸透しているドイツ。友人に乗せてもらったことが何度かあるがこちらも驚きの安さである。シェアカーに続いてシェアバイクが市民権を得ることになるのだろうか?


長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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