せっけんや洗剤の製造・販売を手がける木村石鹸工業(大阪府、木村祥一郎社長)は、自社ブランド事業を一段と強化している。OEM(相手先ブランドによる生産)、業務用、自社ブランドが3本柱で、最近では伸び代の大きい自社ブランドに力を入れている。
転機となったのは15年に自社ブランドを立ち上げたこと。それまで特定の2社への依存が大きかったOEMも、自社ブランド開始を機に技術力のアピールなどにつながり取引先が拡大。収益面でも改善が進んだ。
現在の主力ブランドは三つ。ダメージヘアやくせ毛に特化したシャンプー「12/JU-NI」(ジューニ)、天然素材にこだわったせっけん・洗剤ブランド「そまり」、そしてメイク道具クリーナーやトイレノズル洗浄剤など、かゆいところに手が届くニッチなアイテムを揃える「Cシリーズ」だ。
特徴は、市場規模やトレンドよりも「自分が本当に使いたいか」「大切な人にすすめたいか」を重視するプロダクトアウト型の開発姿勢だ。社内では誰もが商品企画ができ、社員の「これがほしい」アイデアからユニークな商品が生まれる。
同社が特にこだわるのが誠実さだ。化粧品・洗剤業界ではマーケティングを優先した表現が目立つなか、成分をすべて表示し、デメリットも含めて正直に伝える。例えば、ジューニではシリコンの役割や、髪質によって合わない場合があることまで丁寧に説明している。
来春には基礎化粧品の発売を計画しており、企画情報を社内で共有する仕組み作りも進めている。今後はプロダクトアウトにマーケットイン型の発想も追加した商品開発にも取り組む。「数字ありきではないが、自社ブランドだけで30億円は目指せるのでは」と意欲を見せる。誠実な姿勢を強みに、生活者との長い関係作りを目指している。

