《販売最前線》ジュンの「ザ・コンビニ」 銀座の真ん中で〝コンビニ文化〟にのせて 見慣れた店内に限定品を販売
ジュンはコンビニエンスストアをコンセプトにした「ザ・コンビニ」を東京・銀座の「銀座ソニーパーク」地下1階に開設した。ディレクションは藤原ヒロシ氏、空間デザインはアーキタイプの荒木信雄氏が手掛けた。
外観はおなじみのコンビニだが、店内に並ぶ商品はユニークなものばかり。オリジナルのパッケージや商品配置の妙で、買いたい気持ちが高まる仕掛けになっている。
(北川民夫)
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運営するジュンは「公園というテーマに沿った店。藤原氏のファンだけでなく、10代の若者からお年寄りまで幅広い消費者を受け入れる店にしたい」と位置付ける。
銀座ソニーパークは707平方メートルのフラットな地上部と地下4層の「ローワーパーク」で構成されており、地下に吹き抜けがある〝垂直立体公園〟と称する構成になっている。各階層には、沖縄の海を再現したアクアリウムやローラースケート場など、実験的な店舗や体験型イベントなどのスペースを配置している。
〝公園の中の売店〟
そのなかでザ・コンビニは、公園の中の売店機能となる。「日本独自の変化をみせてきたコンビニエンスストアという業態が、銀座という立地で新しいカルチャーを発信する」狙いがある。外観は旧ソニービルのリニューアルを進める際にできた建屋の空きスペースに「店という〝箱〟をはめ込んだイメージ」。
店装は通常のコンビニで使う部材、什器にすることで、あえて見慣れたチープな雰囲気にした。
店内に足を踏み入れると、蛍光灯の明るい照明、外から商品が見える冷蔵ショーケース、雑誌棚など、いつものコンビニで目にする設備。しかし、そこにはユニークな限定商品が並ぶ。
ショップオリジナルのアイスクリームは九州エリアで人気の「ブラックモンブラン」(250円)。製造元の竹下製菓との協働企画で包装するパッケージには銀座かいわいの風景をプリント。
シンプルな別注パッケージで包装したチーズ、めんたい、コーンポタージュ、シュガーラスクの4種類の味の「うまい棒」が40本入った商品(950円)は、店のロゴが入ったクリアファイル付きで人気商品になっている。
アパレルや雑貨商品も売れている。ペットボトルに入ったTシャツ(7500円から)はカラフルなパッケージを付けて並ぶ。ポテトチップスが入った大袋をイメージさせる包装ではクルーネックのスウェトトップ(1万3000円から)を販売。コンビニスイーツを連想させるケーキを模したキャンドル(1000円)やソープ(500円)もある。
シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、ホワイトの5色があるナイロン製レジ袋型バッグ(S・M・Lサイズ、4500円から)も売れ筋で、カラフルな飲料水向け缶をパッケージにして販売している。
これらは冷蔵ショーケースにあり、扉を開けて取り出して購入する。「本物のコンビニを演出するため店舗設備の配置を徹底した。カラーデザインを統一したパッケージで並べて、実際に冷やされたショーケースに配置する。これで消費者の興味を引いて、購買意欲を喚起することができている」という。
一方、雑誌コーナーには東京・神保町の雑誌専門の古書店「マグニフ」の協力のもと、発行年が異なる同じ刊行月のファッション雑誌などのバックナンバーが並ぶ。各年10月号で統一された棚には、95年発刊で竹之内豊が表紙を飾る『メンズクラブ』、97年発売の『コング格闘技』は前田日明がファイティングポーズをキメている。表紙にはその時代を象徴するノスタルジーが漂い、思わず手に取ってしまう。
買いすぎちゃう
ザ・コンビニの公式アプリからは、ニュース配信などがプッシュ通知されている。ジュンの直営ECサイト「ジャドール・ジュン・オンライン」でも扱う。ザ・コンビニの店頭で商品の価格表記に入ったQRコードをスキャンしておけば、ダイレクトにアクセスしてオンライン上で商品を購入することもできる。
ザ・コンビニは9月上旬のオープン以来、「当初想定していた30~40代の客よりも20~30代が多い。来店客のSNSを通じた反応をみると「コンビニのかご満杯にしたら買いすぎちゃった」「桁が1桁違う買い物したよ」などの声が多く、店頭の仕掛けがうまく響いたことを表している。
ジュンでは間口の広いコンビニの形態をとりながら、商品企画で独自性を発揮しファッションに興味のある層へのアプローチを強化する。
コンビニというマスマーケット業態の形態を装いながら、その品揃えはニッチで深い。〝銀座の公園売店〟は、独自のカルチャーを拡散している。
(繊研新聞本紙10月12日付)