皆さん、ウール(毛織物)を着たことはありますか? 暖かい羊毛の織物として高級スーツやコートをまずイメージされるかもしれません。でも、きっと着たことがあるはずです。それは学生服。ウールは汚れにくく消臭性もあるので毎日着る学生服にはぴったり。意外と身近に毛織物はあります。では毛織物は、どのように糸から生地になるのでしょうか。入社2年目の記者が毛織物工場を取材しました。
(小坂麻里子)
90年以上使い続ける葛利毛織工業を見学
訪れたのは、愛知県一宮市にある1912年に創業した葛利毛織工業。
昭和初期から国産のションヘル型シャトル織機を導入し、90年以上使い続けている。
高速織機が普及した今、ションヘル織機は超低速の機械式織機に分類される。手織り機の原理を動力化したシンプルな構造で壊れにくい。超低速運転なので、繊維を傷めることなく優しくゆっくりと丁寧に織り上げるのが特徴だ。
経糸(たていと)の張りも緩く遊びがあるぶん、手触りが柔らかく膨らみがありしなやか。その風合いの良さはスーツ地に最適とされる。同社がションヘル織機にこだわる理由だ。
ションヘル織機は、もう生産されていない。これを同社はメンテナンスしながら大切に愛用している。廃業する同業者から譲り受けるなどして今年は2台増やし、14台になる。
工場の中は、織機の「ガチャンガチャン」というすごい音。油とウールの匂いが漂う。
汗かきの私は、暑い夏は働く人は一体どうしているのか…と心配に。工場の人たちは、そんな心配をよそに黙々と働いていた。