日本通信販売協会の調査による20年度の通販市場売上高は、前年度比20.1%増の10兆6300億円となった。調査を開始した82年以来初めて20%以上の伸び率。コロナ下での購入手段の下支えとして活用された結果だ。一方、急成長するECを中心に、個人情報の取り扱いや、影響力を強める大手モールへの規制強化などが社会的な課題としても注目された。一連の動きへの協会の見解や活動を聞いた。
(中村維)
外出自粛などが追い風となり、通販市場は大きく伸びました。10兆円を超えたのはインパクトがありましたね。特にECモールが伸長。初めてECに触れる人が増えたことが背景にあるでしょう。コロナ禍を機にネット販売を始めた事業者も増加しました。ただ、トラブルも増えています。マスクや除菌剤の販売などで悪質事業者が横行し、課題となりました。
利用者増え競争も激化
今後、緊急事態宣言が解除され、市場への反動がどう出るかですが、いったん通販やECに触れた方は、活用を続けるのではと考えられます。この結果、ベースの通販利用者は増え、同時に競争も激しくなるでしょう。
協会としての活動では今年、教職員向けに通信販売について学ぶ講座を開きました。教科書の副読本には通信販売を利用する際の目安として、JADMAマークの掲載があります。それをベースに、先生方と消費生活センターの相談員さんにもお声がけし、法律の知識も盛り込んで3日間オンラインで学んで頂きました。800人ほどが参加。授業や相談の現場で役立てて頂き、悪質事業者にだまされる消費者が少なくなればと。
事業者向けにも、法改正があれば法律セミナーを実施するなど、様々な研修会やセミナーを開いています。今は、ネットを介すことで、昔と比べ簡単に通販を始められます。しかしそこには、特定商取引法をはじめ、多様な法規制があることをまず認識して欲しい。
また、ネットから始めた会社はわりと顧客対応が後手に回りがちで、クレームとなることが多い。広告があって注文を受け、情報処理をして商品を配送し、代金を回収する。このサークルの1カ所でもほころびるとトラブルが起きる。その点をしっかり勉強してもらう必要があります。
苦情相談窓口も
個人情報保護法では、認定個人情報保護団体として認定を受けています。対象企業で手を挙げたところが、認定団体のメンバーになり、今約80社。その80社は法律の趣旨を徹底し、指針を守って活動しています。サイバー攻撃も増えており、手口も多様に変化していくので、情報処理推進機構(IPA)と連携し、毎年個人情報保護やサイバー攻撃に関するセミナーを開いています。「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」に関しては、経産省から委託を受け、透明化法にもとづく苦情相談窓口を4月に開設。出店事業者から大手モールに対しての相談を受け付けています。
今、会員数は賛助会員含め606社(9月末時点)。ファッション業界でも、今やほとんどのブランドがECを行い、DtoC(メーカー直販)も増えてきました。協会には、多様な通販のノウハウを持ち、苦労して成長を遂げた通販会社がたくさんあります。そうした企業との情報共有もできるので、是非加盟して頂きたいですね。