伊藤忠繊維カンパニー ビナテックスとMOU締結

2018/06/06 06:29 更新


 伊藤忠商事繊維カンパニーは、ベトナムでのアパレル生産を大きく伸ばす。3月にベトナム最大の繊維グループ、ビナテックスの株式を香港・IPAを通じて追加取得して15%弱を保有、ベトナム政府に次ぐ民間筆頭株主となった。5月31日にはビジネスパートナーとしてのMOU(了解覚書)を締結し、新工場の優先的活用など協業を深める。日本に加え、欧米輸出の拡大には、柔軟に使える縫製工場の確保が不可欠なためだ。

(高田淳史)

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 ビナテックスとは15年に5%ほどとみられる株式を取得し戦略的業務提携に関する契約を締結、17年には業務提携拡大で合意した。今回は取得比率を高めて位置付けを戦略的パートナーに引き上げた。「これまでは小率出資。婚約のイメージでビナテックス傘下企業との協業が中心。今後はパートナーとしてビナテックス本体と直接、本格的に組む」とプロミネント・ベトナムの谷衡一郎社長は話す。ビナテックスグループが3、4年で立ち上げる新工場や新棟、専用ライン、対応アイテムに関して優先的に打診を受けられるという。

 具体的には縫製工場10以上のうち、2工場の使用が決定した。一つは19年1月頃に完成するスポーツ関連工場。もう一つは既存工場の2期拡張に合わせ、1、2期分の全スペースを伊藤忠専用にし、ユニフォームとインナー向けで使う。

 北部フンイエン省にはビナテックスが建設中の丸編み巨大生地工場が6月に完成。これで紡績からインナー生産までの一貫体制が整い、19年からの本格稼働で最終的には年間3000万枚まで拡大できる。

 伊藤忠はなぜここまでビナテックスとの協業を進めるのか。「縫製キャパシティーの空きがない状態」だからだ。TPP(環太平洋経済連携協定)から米国が離脱したもののベトナムから米向けの縫製品輸出は伸び続け、ベトナムとEU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)も発効間近。日本に加え、欧米向けの拡大を狙う伊藤忠にとって縫製スペースの確保は不可欠だ。

 ビナテックス、中国・サンライズグループ、台湾系、韓国系などと生地開発を進め、ベトナム国内での生地の調達、開発比率はシャツではほぼ100%となるなど急拡大している。ユニフォーム、スポーツ向けカットソー、インナーでも進め、約600億円の全世界向けFOB(本船渡し価格)取引に、5年後100億~200億円を積み増す計画。「欧州のSPA(製造小売業)、アパレルからは超QRを求められており、応えるには柔軟に活用できる縫製スペースの確保と生地の一定のストックが必要」。生地在庫の仕方については検討し、様々な手法を組み合わせる予定。

 今回のビナテックスとの協業では、伊藤忠の販売網を使い、ビナテックスの欧米、中国向け販売を支援する内容も含まれる。




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