産地の希少な生地との出合いを――糸編は11月、東京都台東区の雑居ビルの一角に「糸編商店」を開いた。週に1、2回は産地に行くという代表の宮浦晋哉さんが、日本各地の生地工場で直接買い付けた残反などを集めた店だ。同様の生地販売は20年から様々な場所で行ってきたが、今後は場所を固定する。
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宮浦さんは12年から産地を回る中で、希少で上質な生地がデッドストックとして工場で眠っていることに「違和感を覚えていた」という。そこで工場の希望価格で買い取った生地を売ったり、かばんにしたりして売る期間限定店を企画。20年から東京・南青山のスパイラルビルやドレスメーカー学院の構内などで期間店を開いていた。毎回好評だったため、場所を決めて継続的に運営することにした。
これまで買い付けた生地は数百反以上。B反のほか「開発反」も揃う。下請けだった工場が新たな活路を求め、自社で色や組織を工夫して独自に生地を開発し、商品にできなかった在庫が開発反だ。「それらを僕たちが買い取り、その売り上げが次の開発資金になれば。出口があることで産地も次の企画を生み出せる」との思いが根底にある。ラグジュアリーブランドの受注も請け負う工場の、希少な過去の開発反が人気商品だ。
来店客は服飾専門学校の学生やパタンナーなど。開店告知はインスタグラムでの発信だけだったが盛況で、オープン日には開店前から列ができ、売り切れも出たほど。「ここの機屋、産地の生地を買いたいとの需要がある」と手応えを得ている。
現在、店の営業日は定まっていないが「今後は日にちを決めても良いかも」と考えている。