三越伊勢丹ホールディングス(HD)の杉江俊彦社長は20年3月期決算説明会で、新型コロナウイルスの感染拡大による消費の影響について「バブル崩壊、リーマンショックに比べて、より世界規模であり、サプライチェーンに打撃を与えている」と終息後も低迷が長期化する見通しを明らかにした。店舗などへの新規投資の抑制、コスト削減を強調した。
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同社は4月8日から首都圏6店の全館休業のほか、同21日以降、食品売り場を除いて全店舗で休業している。「全店休業で売上高が90%超減少し、1カ月当たり150億円の営業利益減となる」ため、4、5月の累計で約300億円の利益減を見込む。
緊急事態宣言の解除後も外出自粛による消費減速で、売り上げで3割減り、利益で1カ月当たり30億円押し下げる。「その後も景気の低迷が続くことになるだろう。20年度の黒字化は一層のコスト削減など構造改革が必要」という。20年度の賞与について、三越伊勢丹HDの取締役は100%、三越伊勢丹HDと三越伊勢丹の執行役員は60%を返上する。
営業再開に向けた安全対策として、10億~15億円を投じる。入店時の検温のためのサーモグラフィーの設置や、客と従業員の間に透明な間仕切りの設置など店内環境整備、従業員への入館時の検温、マスクの配付、ロッカーや社員食堂などの環境整備に順次着手する。
一方で新型コロナに伴う生活様式、働き方、消費行動の変化への対応を急ぐ。その最大のポイントはEC事業の強化だ。従来のオンラインとオフラインのシームレス化、デジタルを活用したCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)とマーケティングの強化に加えて、EC単体の売り上げを拡大する。
投資計画で唯一抑制しないのはデジタル施策で、システム関連投資は60億円を維持する。統合ECサイト・アプリは当初予定から2カ月遅れるが、6月に立ち上げる。ECの20年度売上高は250億円に上方修正したほか、掲載型数を現在の10万型から15万型に増やすことで「店頭商品の7割をカバーできるようになる」という。
20年度の業績見通しは、新型コロナの終息が見通せないことから未定とした。