伊藤忠ファッションシステム(ifs)が、独自性の高い資源や技術を持つ国内企業の事業支援を通じた地方創生に力を入れている。様々な取り組みの一つで、熊本県山鹿市の「山鹿シルク」を活用する「シルク・オン・ヴァレー・ヤマガ」プロジェクトでは、オリジナルのスキンケアブランド「ココン・ラボ」の立ち上げを支援し、9月2日には第1弾の商品を発売する。
(小堀真嗣)
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ココン・ラボは「シルクで、人の肌を癒やし、暮らしを潤す」をコンセプトにしたスキンケア商品。ラインナップはハンド&ボディーウォッシュ(280ミリリットル2000円、480ミリリットル3000円)、ハンド&ボディーローション(同2500円、同3500円)、フェイス&ボディーソープ(80グラム2000円)。2種類の香りを揃える。いずれの商品も成分の90%以上が天然由来だ。販路はECサイトやセレクトショップ、百貨店など。仏パリのボンマルシェでは期間限定店を開く。
同プロジェクトは14年、地域に還元できる新規事業として山鹿のシルクに興味を持った、あつまるホールディングス(HD、熊本市)の島田俊郎社長と中嶋憲正山鹿市長の会談がきっかけで動き出した。あつまるHDは同年に農業生産法人のあつまる山鹿シルクを設立し、蚕のエサとなる桑畑を造成。17年には年間を通じてシルクを安定生産するための周年無菌養蚕工場「NSP山鹿工場」が完工した。
伊藤忠商事には熊本県から「山鹿の養蚕業を活性化し、市の特産品にしたい」と声がかかった。プロジェクトを具体的に推進するため、事業コンサルティングやPR、ブランディングなどをifsが担い、事業主体のあつまるHDをバックアップしている。
「山鹿シルクの本質的な価値を伝えたい」というのはifs第4ディビジョンブランディング第1グループの河合秀彰さん。山鹿シルクは、無農薬栽培された桑の葉から作られた人工飼料を食べ、完全な無菌環境で飼育管理された蚕から生み出され、優れた保湿機能を持つたんぱく質を含んでいるという。
トレーサビリティー(履歴管理)や品質管理の信頼性、地域雇用の創出といった点も価値として挙げる。河合さんは「これらの価値が、生活者視点で有益な価値だと感じてもらえるように再編集したり、新しい価値を加えて伝えたりし、シルクの可能性を広げていきたい」と強調する。
製糸して衣料用に使うだけでなく、食品や化粧品、医薬品、自動車用の部材まで幅広い用途に使える素材としても注目されており、可能性は広がる。遺伝子組み換えなどの技術で新しい機能を加えることもできるという。医薬品用途では米国のバイオベンチャーとの取り組みが決まり、10月に商品開発に着手する予定。ifsはプロジェクトに伴走しながら、シルクの可能性を広げる手助けを続ける。