「3月のイメージは?」
と尋ねられたなら、女子の健やかな成長を祈る節句「雛祭り」があるせいか、とてもフェミニンな印象を抱く。
では、「女性に対するイメージは?」
となると、その時代を象徴する顔の変遷があると思うのです。
そこで世代も国籍も異なる女性たちの活躍ぶりを軸に、3月最初の「CINEMATIC JOURNEY」は「歌姫になった?レネー&のん」をテーマに巡ってみたく。
まずは、今まさに「映画界の時の人」とも称したいレネー・ゼルウィガー!
素晴らしい歌声も披露する、主演作『ジュディ 虹の彼方に』から。
2月10日(月)、第92回アカデミー賞授賞式にて、予想通り「レネー・ゼルウィガーが主演女優賞を受賞しました!」とのニュースを着信。
彼女はかつて『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)と『シカゴ』(02)で、主演女優賞にノミネートされてはいたものの、残念ながら受賞には至っておらず、本作で遂に3度目の正直!待望の初受賞となった訳です。
第77回ゴールデン・グローブ賞でも主演女優賞<ドラマ部門>を受賞したほか、世界の映画賞では前述の受賞を含め、72ノミネート、21受賞という快挙を成し遂げ、全身全霊で挑んだ演技が多くの人々の心を動かし、「世界の主演女優賞を総ナメ」という評価につながったのだと思っている。
そんな彼女がアカデミー賞授賞式で身にまとったジョルジオ・アルマーニによるオートクチュールのコレクション「アルマーニ プリヴェ」のキラキラと輝く白いドレスは、彼女の気持ちを表現しているよう。その際に発表された彼女のコメントをここにシェアしたく!↓
❝全キャスト、スタッフでジュディ・ガーランドの人生を描くために必死に取り組みました。
ありがとう。
また25年間の芸能生活を支えてくれたみなさんありがとう。
移民の仲間たち、何もない中やってきました。
アメリカン・ドリームを信じて、そして今、なんでもできると信じられるようになりました。
この1年間ジュディに関してたくさん話す機会がありました。
私たちはヒーローがいれば団結できるのです。
ジュディ・ガーランドは私のヒーローです。あなたに捧げたいと思います。感謝します!❞(受賞当日、本作宣伝担当より配信)
既に本作に関しての情報をさまざまなメディアなどを通じ、入手済みかとは思われるので、簡単にお伝えすると、多くの人が耳にしたことのある永遠の名曲「オーバー・ザ・レインボー」。
この曲を映画『オズの魔法使』(1939)の主人公ドロシー役で劇中歌として歌い、大ブレイクを果たしたのが本作のヒロイン、ジュディ・ガーランド。
17歳にしてスターダムを駆け上がり、素晴らしい歌唱力と表現力でミュージカル女優として、映画や舞台で大活躍する。
と同時に数多の人生の壁と向き合いつつも、47歳で生涯の幕を閉じるまで挑み続けた彼女。そのエンディングへと向かう68年の冬、「命を燃やし尽くした」と語り継がれるロンドン公演の日々が本作にて、レネーが熱唱&熱演する。
ちなみに、ジュディを演じる正式なリハーサルの1年前から、アメリカで歌のコーチとトレーニングを開始し、その後、音楽監督と共に、4ヶ月のリハーサルを行ったと記されている資料を拝読し、偶然にも本作のジュディと同じ年の今、演じる機会を得た彼女にとって、「オーバー・ザ・レインボー」の一節にもある「どんなに大きな夢も必ず叶うらしい」が実現した!
本作と共に、この時期だからこそレネーやジュディの主演作を、自宅でチェックしてみては?
3月6日(金)より全国ロードショー
配給:ギャガ
© Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019
「歌姫になった?レネー&のん」をテーマに巡る、今回の「CINEMATIC JOURNEY」。
「のん」篇に移る前に、前述のレネーの衣装にまつわる余談と関係する話題を本作資料で発見!
❝ジュディは普段からパパラッチに備えていたと考えて、私の母のシャネルのバッグと、エルメスのスカーフを身に着けてもらったの❞
とは、『ハリー・ポッター』シリーズや『007』シリーズのいくつかの作品をはじめ、レネーとは『ブリジット・ジョーンズの日記』でも協働した衣装デザイナー、ジェイニー・ティーマイム。
というわけで、「ケリー」や「バーキン」などシネマとの縁も深いブランド「エルメス」では毎年、年間テーマを掲げ、銀座メゾンエルメスの看板とも言える、街に開かれた劇場ことウィンドウディスプレイに表現されている。なお2020年度は、「イノベーションの動き」。
今回のヒロインを演じる女優たちの生き方にも通じる、新しい発見と驚きを実感するだろう。
参考までに、01年のオープン以来、国内外のデザイナーやアーティストとのコラボが好評の当劇場。今年度の幕開けを飾るのは、日本のコンテンポラリーデザインスタジオ、we+(ウィープラス)による「美しき出会い–Encounter」。(~4月13日、画像上)
また新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、 3月15日(日)まで休館中ではあるのですが、メゾン内8階にあるフォーラムでは、虹がかかる青い空を思わせる、ブラジルの女性アーティスト、サンドラ・シントによる展覧会「コズミック・ガーデン」(~5月10日、画像下)で、つかの間の休息の時間を体感してみては!
「歌姫になった?レネー&のん」をテーマに巡っている今回の「CINEMATIC JOURNEY」。ゴールは「のん」初のヒロイン作となる『星屑の町』をご一緒に!
前述の映画の舞台60年代のロンドンなら、こちらは60年代の日本。
それぞれにローカル色を表すファッション、そしてヒロインの熱唱が感動を呼ぶ共通点が魅力の本作では、6年ぶりの実写劇場映画出演を果たす「女優・創作あーちすと」という肩書で昨今活躍する、のん。
現在、東京国立近代美術館で開催中(~6月14日、3月15日まで臨時休館)の「ピーター・ドイグ展」の音声ガイドナビゲーターも務めている。
四半世紀にわたり愛され続けてきた人気舞台の初映画化と重なり、ヒロインの熱量が吹替え無しの歌声となって心に染み入る本作。
劇作家・演出家の水谷龍二とラサール石井、小宮孝泰によるユニット「星屑の会」が、94年に第一作「星屑の町・山田修とハローナイツ物語」を上演。以降シリーズ化され、同一メンバーで上演を継続しているとのことだ。
昭和歌謡の名曲が時にノスタルジックに、そしてヒューマンな味わいを添え、スクリーンを彩る中、冒頭のジュディの終生のテーマソングのごとく、歌手を夢見るヒロインが、思いがけない出会いにより、夢が叶う日がやって来る。
それはまた、おじさん達の売れないコーラスグループも同様で、ヒロインとの美しい出会いが、思いがけない成功へとつながる。
ひょっとすると終演後、希望の星が観る者の心のどこかに輝いているかもしれない。
3月6日(金) よりテアトル新宿、丸の内TOEI他 全国公開
©2020「星屑の町」フィルムパートナーズ
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中