「工場も、こころも〝ひらく〟オープンファクトリー」をテーマに、4回目のひつじサミット尾州が開かれた。工場見学やワークショップ、各社が作った製品の直販、グルメなど、繊維産地・尾州から地域ぐるみのイベントへと広がりを見せている。ひつじサミット尾州の開催を通じて尾州産地が変わろうとしている。
【関連記事】《次世代が拓く産地の未来①》フェスで連携、「開かれた産地」へ
ライバルから協力者に
回を重ねるにつれ、これまでの尾州産地ではなかったような意識が芽生えている。「かつて工場を見せることなど考えられなかったが、産地が縮小して糸染めやかせ染め業者が減るなかで、互いに良いところを見せあって、得たものを持ち帰って取り入れる。協力し合うことで産地を守る方向に振れている。もはや競争者=ライバルではなく協力者だと思う」。こう語るのは伴染工の伴昌宗専務。
新たに参加した手芸糸製造の後正産業は「当社の前後の経路を調べたところ〝これからタキヒヨーに行く〟、〝小塚毛織に生地を購入しに行く〟、〝森保染色のイベントに向かう〟などと話す訪問者があった」(西川由紀常務)とこれまでになかった訪問ルートが聞かれた。
同じく初参加のピアチェーレは「産地のイメージアップのために取り組む人がいるのは大事なこと。若い人が中心となって、産地の知名度を上げることは重要」(矢野恵一社長)と話す。同社ではイベント期間中にファンシーヤーンを使ったコースター製作のワークショップを開き、一般客に訴求した。
製品ブランドの訴求も
新たなアイデアを持って参加する動きもある。ソトーの協業プロジェクトに参加した、国際ファッション専門職大学名古屋ファッションクリエイション・ビジネス学科の学生がその好例だ。ソトーの生地を使ったバッグやボトルホルダー、コインケースなどを販売する傍ら、古着を持ち寄りフリーマーケットを開いた。その際に名古屋大須地区の古着専門店13店を回り、同イベントをプロモーションした。「産地関係者では想像できない取り組み」だ。
自社ブランドを一般消費者に紹介するインキュベーションのような役割も果たす。伴染工は「設備だけでなくもっと技術を知ってもらいたい」と「ウィズハンク」を立ち上げた。自社のかせ染め糸を協力工場で靴下に仕立てた商品で、「靴下工場に当社の糸を知ってもらうこともでき、取引につながった」という。
小塚毛織は「エイク」をアピールした。今回は初日午前で約40人が工場見学に参加。「エイクの認知度を高める機会にもなった」とする。
同イベントの発案者の一人で中心メンバーの岩田真吾三星毛糸社長は「尾州産地をフットワーク軽く元気づけるイベント。同時に一つのコミュニティーとして業種や産地を越えてさまざまな交流をする。今後はイベントだけでなく通年で活動していきたい」とする。