フランスのフレグランス「ドルセー」が日本でのビジネスを成長させている。本国と提携してドルセージャパンを担うグリーンスタンプのD&M事業部は、日本独自のアプローチも取り入れて認知を高めている。トレーニングマネジャーの折原潤子さんは、香りと洋服の親和性を接客に生かす。
(須田渉美)
その人らしさ表現
ドルセーは1830年に誕生した歴史の長いフレグランスだ。15年にアメリー・フィンがCEO(最高経営責任者)となって、有力な調香師と協力しながら新たな側面を広げてきた。独自の配合のフレグランスに人のイニシャルを採用したり、香りから思い描く時間帯をキャンドルの名称にしたりして付加価値を持たせている。グリーンスタンプはドルセーの輸入代理店になった20年末、東京・表参道に直営店を開いた。
自らも店頭に立つ折原さんは「ポートレートのように香る、その人らしい香りが見つかるようにカウンセリングしていく」ことで来店客の心をつかむ。日本人のほとんどは自己表現としてフレグランスを選ぶことに慣れてはいない。多くの人が「はやっている良い香り」を選ぶ傾向にある。感覚的な香りの個性を理解してもらうのは難しい。しかし、そのテクスチャーを「洋服や音楽に引き付けて話すと伝わりやすくなる」という。
一つひとつの香りは、素材、シルエットや色に例えることができる。「カシミヤのような柔らかさを持った木の香り」「手の温かみや滑らかさのあるレザーの香り」といった具合だ。針葉樹の香りはシャープでタイトさがあり、南国系の香りにはボリュームがある。木の香りはグレー味を帯びているなど、目に見えない香りを説明する要素はたくさんある。

自己実現に導く
来店した人が「どんな香りが好きか分からなくても、服装やスタイルに合わせて香りを勧める」ことで自分に似合う香りとの出合いを導く。直営店のスタッフとも、その姿勢を共有して顧客との信頼関係を築いてきた。卸売りをしている一部のセレクトショップでも「香りに詳しくなくても、来店客が着用する服やブランドに合わせて勧めることができて、会話のきっかけになる」と好評だ。
今年5月、ドルセーは新ラインの「エクストレドゥパルファン」を出した。本能に訴えかける濃度の高さに加えて、経過時間に応じて異なる個性の香りを感じる深みのある製品だ。通常のフレグランスとは異なり、「パワーのある香りなので、目標や理想像を持っている人にエネルギーを感じてもらい、自己実現をかなえてもらいたい」という。