阪急うめだ、今どきママの需要喚起

2015/08/17 12:40 更新


【販売最前線】阪急うめだ本店ベビー・こども服

ギフトではなく母親目線で品揃え

 阪急うめだ本店の11階ベビー・こども服売り場が好調だ。インバウンド(訪日外国人)需要のあるトドラーはもちろん、ベビーも伸びている。

 これまでベビーは、出産準備や祖父母からの出産ギフト需要に支えられてきたが、新世代ママを「うめはんママ」とくくり、独自のMDを構築。ママたちの需要喚起に成功した。

 14年9月のベビーゾーンの改装後、今どきママの目線で作った売り場やイベントが受けている。(安部裕美)

 

トークショーの様子。話題の人との協業品やイベントを頻繁に打ち出している。うめはんママの情報拡散力も大きく、インスタグラムでは利用者から自然発生的に「♯うめはんママ」のハッシュタグが付けられる
トークショーの様子。話題の人との協業品やイベントを頻繁に打ち出している。うめはんママの情報拡散力も大きく、インスタグラムでは利用者から自然発生的に「♯うめはんママ」のハッシュタグが付けられる

 

パーソナルギフトに注目

 ベビーゾーンのなかでも、集客の要になっているのは、自主編集売り場「マム&ベビーセレクト」だ。改装前は月齢別に編集していたが、改装後はライフスタイルをイメージし、①ベビーカーや抱っこひもなどの「おでかけ」②食器やソフトトイなどの「お部屋」③クリスマスや誕生日などのパーソナルギフトの「お気に入り」――の三つのゾーンに分けた。

 断トツの売り上げは、お気に入りゾーン。ママたちは自らが使って良かったものを人に贈ったり、SNS(交流サイト)や口コミで広めたりするため、ギフトと自家需要の両方を取り込んだ。四季折々のパーソナルギフトの売れ筋は、従来型の出産ギフトとは大きく異なり、「エイデン&アネイ」のおくるみや「ビジュー&ビー」の服などが人気だ。

 14年度下期(14年9月~15年3月)のベビーゾーンの売上高は、前年同期比13%増。中心となりつつあるマム&ベビーは17%増。下期後半の15年1~3月は40%増、4月は96%増と大幅に伸びている。

パーティーグッズまで

 新たにターゲットに据えたうめはんママの特徴の一つは、興味のある情報を自ら取りに行くこと。このため同店は、「ビジュアル重視の情報発信、ネットなどで話題のコトや人をリアルに体験できる場の提供」(下澤亜由美阪急阪神百貨店第1店舗グループ子供服商品統括部ベビー・雑貨・玩具商品部長)を意識してきた。

 最たる例が、春のベビーフェアで、米国発祥の妊婦のためのパーティー「ベビーシャワー」に着目したこと。妊婦の友人らが出産後に必要なものをシャワーのようにプレゼントするもので、モデルの間ではやっている。ただ、ママたちの関心は高いものの、詳細はあまり知られていないため、同店がもてなし術や必要な品を提案した。

 

関心は高いが詳しく知られていない「ベビーシャワー」は、同店が調べ具体的なギフトやテーブルコーディネート、室内装飾を形にして見せた
関心は高いが詳しく知られていない「ベビーシャワー」は、同店が調べ具体的なギフトやテーブルコーディネート、室内装飾を形にして見せた

 

 「室内装飾のバルーンやガーランド、食器、菓子などのパーティーグッズは、百貨店のベビー・こども服売り場が扱わないものばかり。ベビーシャワーに必須のダイパーケーキ(おむつケーキ)の人気ブランドをSNSのインスタグラムなどで調べ、仕入れた」という。単価の低い物も含め取引先は多岐にわたったが、ワークショップを連動させて集客や購買につなげた。

同世代の社員が流行捉える

 そんな新売り場を支えるのが、女性5人、男性2人を核とするチーム。女性スタッフの多くがうめはんママと同世代だ。そんな彼女たちの本音を引き出せるよう、月2回は昼食時にフランクに意見交換できるランチミーティングを開き、フェアの打ち合わせをしている。

 「抱っこひもカバーって知っていますか」。4月27日、社内ランチミーティングをのぞくと、夏のベビーフェアで打ち出す、話題の商品について会話が広がっていた。

 同ミーティングでは上司である由本統括部長も同席するが、あえて多くは口を挟まない。この日は5月に開くメード・イン・ジャパンフェアについて一言だけ。「職人技に走りすぎないように。ママに響くようストーリー作りに注意して」と大枠のみを伝え、あとはスタッフに任せていた。

 

うめはんママとは? 

由本雅則阪急阪神百貨店第1店舗グループ子供商品統括部長の話

由本雅則阪急阪神百貨店第1店舗グループ子供商品統括部長
由本雅則阪急阪神百貨店第1店舗グループ子供商品統括部長

 ベビー・子供服売り場のターゲットは、団塊ジュニア(71~76年生まれ)から、「うめはんママ」と名付けた次の世代へ移りました。一般にメディアで「プリクラ世代」(77~86年)、「ハナコジュニア世代」(87~92年)と呼ばれる28~38歳のベビーを持つ母親です。

 

 特徴を比較すると、団塊ジュニアはやや内向的で、子育てや家事を優先的にストイックに行います。一方のうめはんママは、子育てや家事と並行して、仕事を続けたり、趣味や友達との時間を持ったり、自分の生活を楽しむ人たち。ミーハーで、SNSでの自己表現が上手。一つのブランドに捉われず、抱っこひもならTPOに合わせて3本ほど持つ人もいます。

 

 彼女たちの行きたい売り場を考えた時、郊外のSCは近くて車で行きやすいけれど、満足度は高くないだろうとの仮説があり、当店で作ることにしたのです。

 

 トドラーやキッズでなく、ベビー市場から着手した理由は、子供の成長が早く、3~4カ月おきに買い換え需要が起きるためです。出産ギフトではなく、生活者のママ目線で品揃えしたのが大きな転換点でした。ベビーは毎日がテストマーケティングの状態ですが、子供服は12年ビジネス。今後はトドラーの売り場も仕掛けていきます。

(繊研 2015/05/18 日付 19238 号 10 面から)

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