ゴールドウインが運営するアスレチックブランドのセレクトショップ「ニュートラルワークス.トーキョー」が、ユニークな手法による店作りに挑戦している。屋外に扱いブランドのロゴを出さないなど、店舗に特定のイメージを付けないようにするもので、ブランドビジネスのセオリーとは異なる。買い上げ率や客単価は他のアスレ店より高いなど成果が出始めている。
ニュートラルワークス.は、「カラダをニュートラルな状態に整える」ことをコンセプトとして、昨年4月に国内屈指のスポーツエリアである東京・外苑前に開設した新業態店。1~2階は、アスレチックブランドを中心に売り場を作り、3階にはストレッチや低酸素ルームなどサービスコンテンツを集める。1階にはカフェも併設し、ヘルシードリンクも提供する。
アスレ市場は「ナイキ」「アディダス」など大手外資ブランドの存在感が強い。そこで、幅広い客を取り込めるようにするためにあえて「明確な店舗のイメージを作らない」(安倍季隆事業統括本部販売一部ディストリビューショングループマネージャー)ことにこだわった。
例えば、屋外に扱いブランドのロゴを出さないようにして、特定のブランド色がつかないよう配慮。入り口付近には植栽を設置したり、ナチュラルフードを陳列したりと、スポーツ店であることすら分かりづらい。ホームページやSNS(交流サイト)などのルックも、実際のプレー時のビジュアルは使わない。売り場ではブランドごとのスタイルを見せず、ブランドミックスによるコーディネートを徹底。さらにアスレチックブランドだが、普段着として使える新たな着こなしの提案に力を入れた。
こうした取り組みにより「想定より速いスピードでお客様とつながった」(安倍氏)と手応えを得ている。商圏としては未成熟なエリアのため、売り上げは当初予定を下回るが、来店客の大半が目的客で、買い上げ率は他のアスレ店に比べ2倍、客単価も1・3~1・5倍高いという。
客自身が使い方を考え、商品を選別する買い方も出てきた。例えば、ヨガ用に開発した「ダンスキン」ウェアを、ランニング用や普段着として使ったり、厳冬期のラン用に企画した「ザ・ノース・フェイス」の薄中綿入りジャケットを、普段使いのアウターとして購入するといった具合だ。
スマートフォンアプリやSNSを駆使した、きめ細かいコミュニケーション策も、購買や集客に寄与する。同様のサービスを提供する自社の他ブランドと比べて圧倒的に店舗数が少ないにも関わらず、アプリのダウンロード数は引けをとらない。また、イベント告知に対するリアクションはニュートラルワークス.の方がむしろ良いという。同社では「“体を動かす、整える”というメッセージが、お客様のどんな嗜好にも響きやすく、登山などユーザーが限定されるアウトドアに比べ関心を寄せやすいため」(安倍氏)と分析する。
今後も今の路線を徹底する。週1回開催を目標にしている店主催のアスレイベントは、18年3月期から曜日ごとにアクティビティを固定する方針。3階のサービスコンテンツには“目”や“睡眠”をテーマにしたメニューの追加も検討している。出店は物販だけでなくサービス部門とのセットが条件という。