繊研新聞にて、毎日欠かさず掲載してきた「FB用語解説」から30をえりすぐり、難易度別に「基本の〝き〟」「すっかり業界人」「かなりの達人」に区分してみました。今回は「かなりの達人」編です。
さあ、どのくらい正確に答えられるでしょう?お楽しみください。
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□ヤング率
繊維の硬さを表す尺度
繊維を含め物体の硬さを表す尺度。初期弾性率ともいう。この数値が大きいほど弾性(元に戻ろうとする性質)が強く、繊維は硬い。繊維は引っ張る力に比例して伸び、力を緩めると元の長さに戻るが、引っ張る力が大きすぎて伸びが限界を超えると、元の長さには戻らない。元に戻る最大限のところまで伸ばした時の引っ張る力がヤング率。綿やポリエステルはヤング率が高い部類に入り、それらの繊維を用いた織物はハリ・コシがある。一方でナイロンのようにヤング率の低い繊維を用いた織物はハリ・コシが弱い。
□ソクパス
新品の靴下をセットする金具
新品の靴下の、つま先とゴム口の2カ所に、左右(1足1組)をセットするために付いている小さな金具。戦後にアメリカから入ってきた靴下に付けられていたもので、形がコンパスに似ていることから、「ソックスプラスコンパス」の造語ができた。ソックパスともいう。ナイガイによると、同社がソクパスを日本で初めて作った。以前の糸を縫い合わせるものと比べ効率が飛躍的に向上したという。近年は環境保護や利便性などの観点から、ソクパスを使わず、糸をすっと抜くだけのセット方法も多い。
□整理(セール)期
売り切るための工夫が必要
売り場展開、品揃えを考える上で、期間区分の設定は重要。販売期間は紹介期、最盛期、整理期の3分類。セール時期は完全に売り切ることが最重要のポイント。売り切るためにはマークダウンだけでなく、売り場の配置、展開・販売方法などの工夫が必要になる。マークダウンは段階的に実施するほか、売れなかった商品はその理由を把握し、処理を早期化する。この時期は次シ-ズンの紹介期にもなるので、セールとプロパーを明確に区分することが重要になる。次の紹介期の商品の動きを注視することも忘れてはならない。
□縦積み
同じ商品を多く用意し機会ロスを防ぐ
売れると見込んで特定の商品を大量に計画・投入すること。「奥行きをつける」「奥行きを持たせる」と表現する場合もある。縦に積むことで、重点商品が店頭で品切れして販売機会ロスになることを防ぐ。ブランド全体の品番数は絞りながら一部の品番を縦積みすることで、生産や販売の効率を上げる効果も期待できる。トレンド商品などの縦積みはリスクもあるが、他社に先駆けて提案することで大ヒットするケースも見られる。実際に特定の品番がまとまって売れた場合、「縦売れした」と言う。
□GB
中国国家標準規格の略称
中国国家標準規格の略称でGBまたはGB規格と呼ばれている。略称の「国標」のピンイン表記の頭文字を取ったもの。日本のJIS(日本工業規格)が任意標準であるのに対してGBは強制標準と推奨標準の2種類がある。強制標準に適合しない製品は生産・販売・輸入ができない。推奨標準は取り締まりの対象になるわけではないが、適合していないと、通関時の検査が厳しくなったり、取引できない恐れがあると言われている。また、強制標準が推奨標準を引用していて、準拠が必須になっている場合もあるので注意が必要だ。
□共亨経済
中国のシェアリング・エコノミー
中国では、16年の夏ごろから北京、上海など1級都市で共亨単車(シェア自転車)が急速に増えた。都市部では生活に欠かせないサービスとなり、通勤時間に自宅から駅までシェア自転車で行く光景は、当たり前のものになっている。同様のサービスは自動車、モバイルバッテリー、傘、そしてファッションと、様々な分野に広がっている。このシェアリング・エコノミーを表す言葉が共亨経済だ。調査機関の発表によれば16年の市場規模は3.5兆元で、延べ6億人は利用したという。
□プレコレクション
販売期間が長く重要性増す
デザイナーブランドを中心に、シーズンのメインコレクションの前に発表されるプレフォール、プレスプリング(クルーズとも呼ぶ)コレクションのこと。当初はメインの補完として、シンプルでコンパクトな商品群だった。しかしここ数年、世界的なファッション不況からコレクション周期の見直しが起こっていることと連動し、メインよりも販売期間の長いプレを重視するブランドが増えている。一部ラグジュアリーブランドは、プレでも大掛かりなショーを行うようになり、重要性は増すばかりだ。
□CSV(共通価値の創造)
CSRに代わる企業戦略
Creating Shared Valueの略。ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・E・ポーター教授らが提唱している概念。企業が地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら競争力を高める方針と実行、と定義される。社会と経済の両方の発展の関係性を拡大することを重視する。ポーター教授はCSR(企業の社会的責任)が社会貢献や慈善活動と捉えられ、企業の経営戦略になりえなかったと指摘。本業に即した形で社会的課題の解決に取り組んでいくべきとする。ネスレが世界で初めてこの概念を取り入れ、グローバルな活動を進めている。
□ミニミー
大人服と同じデザインのベビー・子供服
英語のmini meで、「小さな私」が転じた言葉。ハリウッド映画で使われたのが始まりとされるが、ファッション業界では大人服と同じデザインのベビー・子供服のことを指す。10年前後に、欧州のコレクションブランドがベビー・子供服ラインを始めると同時に、母親や父親とお揃いの服を狙って企画するようになった。トレンドに敏感な客層の共感を誘い、ブランドに対する親近感をわかせる効果もあり、多くのファミリー業態に定着。SPA(製造小売業)ブランドも取り入れるようになった。
□ティアード
フリルを段々に重ねた装飾
ティアー(tier)とは、ひな壇状になった層や段を意味する。ファッションにおいては、フリルやラッフルを段々状に重ねたディテールのこと。シンプルなスタイルに代わって、装飾性がメインストリームに躍り出るなか、一気に広がっている。ふわふわと布が揺れる華やかな雰囲気と女性らしいスイートな感じが楽しめる。ティアードドレスやティアードスカート、ティアードスリーブなどがある。この流れを引っ張っているのは、「グッチ」を手掛けるアレッサンドロ・ミケーレ。彼による装飾主義に欠かせないディテールになっている。
終わり