【ファッションとサステイナビリティー】変わる外国人技能実習制度 繊維業に求められる要件とは?

2024/05/30 05:30 更新


経産省の田上氏(左)、繊産連副会長兼事務総長の富吉氏

 繊研新聞社は、「変わる外国人技能実習制度・繊維業に求められる要件とは」をテーマに、「繊研サステイナブルコミュニティー・セミナー」を都内で開いた。経済産業省製造産業局生活製品課長の田上博道氏、日本繊維産業連盟副会長兼事務総長の富吉賢一氏が登壇し、会場、オンライン含めて300人以上の参加者が聴講。田上氏は「繊維産業における特定技能外国人の受け入れに向けた検討状況」について解説。富吉氏は「外国人労働者の活用に向けて」として、各企業がとるべき手続きや順守しなければいけない項目などを紹介した。セミナーの後半では、参加者を交えた質疑応答を実施。多く参加者から質問が出されたが、それら全てをセミナー開催の時間内に対応することができなかったため後日、経産省から繊研サステイナブルコミュニティーに対して回答を得たので、ここに紹介する。

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国際的認証を生かして

 Q. 特定技能実習生を受け入れるにおいて第3者監査が必要なことは理解しました。国際的に認知されたイニシアチブは監査員が監査しますが、その成否の判断はするのでしょうか。日本でも様々な民間機関が海外イニシアチブとの協業を始めていますが、その工場へ「優良企業」というお墨付きを与えることを政府は認めるのですか。

 A. 繊維業の追加要件では、「国際的な人権基準に適合し事業を行っていること」とされており、公開された監査要求事項等に基づき、第三者による認証・監査機関の審査を受け適合していることを求めています。現時点では、既存の認証制度等として、GOTS(グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)、エコテックスステップ、SA8000、ブルーサイン、WRAP(世界規模の責任ある認定生産)、GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)、RWS(レスポンシブル・ウール・スタンダード)、RMS(レスポンシブル・モヘア・スタンダード)、RAS(レスポンシブル・アルパカ・スタンダード)、日本アパレル・ファッション産業協会CSR工場監査要求事項の監査を受け、認証を取得しているまたは監査の審査を受けて合格していることを要件とすることを考えています。近日中に公表及び改正を予定しており、その対応を前提として対象とする予定です。本追加要件は、あくまで、国際的な人権基準に適合した事業を実施しているかを判断しており、特定技能所属機関の優良性を判断するものではありません。

検査機関や社労士活用

 Q. JASTI(ジャパニーズ・オーディット・スタンダード・フォー・テキスタイル・インダストリー)の第三者監査の監査機関は、どのような機関を考えていますか。

 A. 繊維業の追加要件である「国際的な人権基準に適合し事業を行っていること」について、既存の認証制度等に加えて、経済産業省にて繊維産業の監査要求事項・評価基準JASTI(仮称)を年内をめどに策定予定です。監査機関は、繊維関連の検査機関や、社会保険労務士等を対象とすることを検討しています。具体的な制度内容については、経済産業省の審議会(繊維産業小委員会)において検討していきます。

参加者を交えた質疑応答を実施した

人手不足に対応

 Q. 今回の特定技能制度は、少なくとも直接的労務コストだけみても、日本人と同等かそれを上回るような建て付けになっていますが、繊維・縫製産業以外の産業でこの制度(技能実習制度からの変化)への受け止めはどうですか。やはり、労働力確保が最大課題ゆえ、産業界として有益とする受け止め方ですか。

 A. 特定技能制度が、深刻化する人手不足への対応について、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分類に限り、一定の専門性・技能を有して即戦力となる外国人を受け入れる制度であり、各業界からの要望等により必要性の説明がなされた上で認められている制度であることから、今回追加された他業界においても深刻化する人手不足への対応として有益であると受け止めているものと考えられます。

認定取り消し5年間

 Q. 違法就労で書類送検されても、代表者が変わる(実権は前代表者が持っている)だけで再び受け入れが可能になるのでは。この際、不可能になるくらいの制度に変えて頂きたい。

 A. 特定技能の受け入れ機関が満たすべき基準については、制度所管省庁である法務省、厚生労働省において検討されるものであると承知しておりますが、現行の特定技能制度においては、特定技能基準省令第2条に規定するとおり、技能実習で認定の取り消しを受けた事業者は当該法人の役員等を含め、5年間は受け入れが認められておりません。当該法人の役員とは、業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含んでいます。

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(繊研新聞本紙24年5月30日付)

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