繊研サステイナブルコミュニティーは、「Z世代のサステイナブル消費のリアル・買いたくなるエシカル(倫理的な)商品って何?」をテーマにパネルディスカッションを行った。エシカルな消費や情報発信の在り方ついて、Z世代の学生と、企業やデザイナーがそれぞれの立場で意見を交わした。
寄付で購買促進
ディスカッションの冒頭に、ファストファッションによる労働問題や環境問題に取り組む学生団体「エムジークローゼット」代表の白井俊乃介さんが、「最終消費市場でエシカルな商品に対して認証マークを貼ることはできるのか。エシカル消費を促進するツールになるし、その製品の生産を応援することになる」と口火を切った。
これを受けて、タキヒヨーの森康智広報・IRチーム兼サステイナブルプロジェクト「ブランク・フォー・グッド」ファシリテーターは、「販売時に寄付を入れ込むことが少しづつ増えている。それによって、サステイナブルやエシカルな商品を選ぶことを促すような市場になっていくだろう。生産する人たちも豊かになる」と指摘した。
ワールドプロダクションパートナーズ・品質管理部仕入管理課所属の枝村正芳さんは、「寄付によって生産者も販売する側が見えてくる。エシカルなプロセスの生産現場が評価されることでモチベーションが上がり、適正工賃にもつながってくる」と述べた。
アップサイクルブランド「ドゥッカ・ヴィヴィト」を運営する夏明豊ドゥッカ共同代表も、「サステイナビリティーや循環型社会を意識した企業の商品を購買することで、サステイナブルな社会への活動が加速する。それがカジュアルなサステイナビリティーとの向き合い方だと思う」と発言した。
菅内のどかドゥッカ共同代表も、「私たちよりちょっと上の世代のデザイナーは、『背景を表に出すのは格好悪い』との考えがあった。でも私たちは、自分自身のSNSで裏側もどんどん発信するし、等身大で伝えていくことが大事だと考えている」と語った。
QRコードの意味
夏さんは学生らに対し、「消費者はQRコードで商品のトレーサビリティー(履歴管理)が確認できることを求めているのか」と質問した。
衣料大量廃棄問題に取り組む学生団体「カルテナ」の吉田羽那共同代表は、「ちゃんとは見ないと思う。でもQRコードを付けていることで購買動機のプラスポイントになる」。海洋保全に取り組む学生団体「ナミマチ」の財前雅アドバイザーは、「私もいちいちスキャンしないと思う。でも、消費者が確認できるように選択肢を与えることは、すごく意味があると思う」と述べた。
白井代表は、「エシカルへの関心が無い人に、知ってもらえるツールとして必要だ」などとして、QRコードによる履歴表示の必要性を述べた。
これを受けて企業側からは枝村さんが、「今は事実を伝えることが、企業には求められている」と発言。タキヒヨーのサステナブルセクションプロダクションチームの國澤あや乃さんは、「私もZ世代に入る年代だが、企業で物作りに携わっている立場から言うと、商品の背景に非常に関心がある。気になってスキャンする」語った。
森さんは「宣伝と広報の違いがある。宣伝は企業の汚いところは見せない。でも、エシカルとかサステイナブルとかは広報の姿勢が必要。今、コーポレートコミュニケーションのトレンドは〝等身大の広報〟だ。そこをしっかりと考えて社会に発信しなければならない」との考えを示した。
(繊研新聞本紙24年11月26日付)