13年4月24日にバングラデシュで発生したラナ・プラザの倒壊事故。ビルに入居していた縫製工場で働く1100人超が死亡し、負傷者は2500人を超えた。この悲劇を契機に始まったのが、ファッション産業の健全化を目指す世界的なキャンペーン「ファッションレボリューション」だ。日本の事務局を務めるファッションレボリューションジャパン(一般社団法人ユニステップスが運営)は東京・神宮前のジャイルギャラリーで6月29日まで、服と自然環境、服と作り手、服と着る人の関係を見つめる展示「トゥー・ディケイズ・オブ・ヒドゥン・ファッション」を開催している。
同展は、ラナ・プラザの事故から10年経った今、「ファッション産業を取り巻く状況は変化したのだろうか?」の問いを入り口に、これまでの10年を振り返り、これからの10年を見据える。「服はどこから来てどこへ行くのか。一つの服を選び、まとうという行為が結果的に社会に与えている影響を、私たちは日常の中でほとんど知ることができない。服を取り巻く仕事を生業にする人々の声を聞くことができない。見えない聞こえないファッションの一面を、本展を通して感じてもらえたら」と企画した。
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入り口にあたるセクションAに展示しているのは、裾からはみ出すほど長いタグの付いたTシャツ。コットンのTシャツができるまでの工程とそれを担う人の名前を表示したタグで、服作りに携わる人々の存在を可視化した。
セクションBには、綿、ウール、レザー、ポリエステルなど、服作りに使われる素材の原料を展示している。服に形を変える前はどんな存在だったのかを知らせている。
メイン展示のセクションCは、ファッションと自然とのつながり、ファッションの労働環境、人と服との関係性などの様々な情報を、数字やビジュアルで表している。増え続ける洋服の生産量、企業の透明性への対応、消費者のリサイクル意識など、近年のファッション産業の変化は、ポジティブなものもネガティブなものもある。そのほか、世界各地で発生したファッション関連工場の事故の年表も掲示し、ラナ・プラザ以降も死亡・負傷事故が多数発生していることを伝えている。
セクションDは、服のライフサイクルにかかわる人がどのような思いを持っているのかという声を、映像や手紙などを通じて届けている。
展示の最後には、来場者が企業やブランドに声を届けるアクションブースを設置した。ファッションレボリューションがメッセージしてきた「WHO MADE MY CLOTHES?」(私の服は誰が作ったの?)を、企業・ブランド宛ての手紙にし、その場で投函できる。投函口は全身鏡の中にあり、鏡に映った自分と服とを改めて見つめ直すきっかけを与えている。
(繊研新聞本紙23年6月15日付)