【ファッションとサステイナビリティー】艶金代表取締役社長 墨勇志氏 脱炭素経営の事業改革に共鳴

2022/08/30 05:29 更新


墨勇志氏

 二酸化炭素排出の削減を経営の基本方針とする「脱炭素経営」を志向している艶金。「染色整理加工業は繊維産業のサプライチェーンで最もエネルギー使用が大きい業種」と指摘。このため「サプライチェーン全体での環境配慮では染色整理加工業が真っ先に取り組むべき」と語る。

 19年に環境配慮型を志向する会社をアピールしてサプライチェーンに参画しようと考えました。繊維は他産業に比べると環境配慮への取り組みが遅れていました。しかし夏の酷暑や猛烈な降雨、洪水の頻繁な発生など地球温暖化による気候変動の大きさを生活者は深刻に受け止めるようになってきており、いずれは繊維業界も環境配慮の対策を考えなければならなくなると感じていました。

 この3年間では地味で目立たない対策を積み上げてきました。ハード面では低浴型染色機に代表される省エネ型・省資源型の設備に順次更新してきました。

 染色加工業で大きなコストを占めるのは電気ですが、電力契約で毎年10%を再生可能エネルギーに置き換えました。電気使用が同じ量であっても、二酸化炭素排出を10%減らすことになります。

 電気の使用量の削減にも取り組みました。照明を順次LEDに切り替えたのもそれです。

 今年から来年にかけては、工場敷地内に太陽光発電の設備を導入します。自動車60台程度の屋外駐車スペースに屋根を付け、そこに太陽光パネルを付けます。自家発電で全工場の電気使用量の3%をまかなえると想定しています。

 脱炭素経営への転換によって同じ考え方を持つ企業さんが共鳴し、いくつかの新規受注につながりました。また当社が長らく行ってきました食品残渣(ざんさ)を染料として加工する「のこり染め」にも引き合いが増えています。繊維業界だけでなく異業種などからもノベルティー開発などの取り組みもできています。

 他方で環境配慮やサステイナブルなどSDGs(持続可能な開発目標)に関連したイベントや共同プロジェクトにも積極的に参画しています。関連する企業や業界だけでなく生活者への発信も重要です。今後もファッション業界の変わるべき方向として、当社なりの考え方を訴えていきたいと思います。

(繊研新聞本紙22年8月30日付)

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