【ファッションとサステイナビリティー】かこっとん代表 鷲尾吉正氏  “継続可能”な国産綿花栽培を

2022/07/28 05:29 更新


鷲尾吉正氏

 11年から兵庫県加古川市で超長綿のオーガニックコットン(OC)栽培を本格化。「江戸時代、全国に名をはせた『播州木綿』を復活させ、地域経済、地場産業である靴下を元気にしたい」と様々なプロジェクトを推進してきた。環境重視、地方の見直し、海外の超長綿の高騰など追い風を感じているが、重要なのは「農家をはじめ関連する全ての人たちが、無理せず継続的に綿花を作り続ける仕組みの確立」と力を込める。

 2月のジャパン・ヤーン・フェアでは、頂いた名刺だけで170枚、国産綿花への関心の高まりを実感しました。つり編みのトレーナー、先染め織物、ミシン糸など様々な協業の話を頂いています。種を分けて欲しいなどの声も増えてきました。

 ただ、改めて理解してもらいたいのは、国産綿花は高くなるということ。海外綿花、特に超長綿の値上がりや円安もあって、価格差は縮まっていますが、それでも15倍ぐらいでしょうか。OCの環境や肌への優しさは周知されてきましたが、要は、値が張る背景は何なのか、国産綿花作りに携わる人々の思いやストーリーをいかに伝えていけるのかが肝心です。

 今、手摘みの良さを改めて訴えようと考えています。かこっとんは、営農組合を主に、障害者支援となる就労継続支援B型事業所の方々にも収穫をお願いしています。最初に採れる綿花、いわゆるファーストコットンは、繊維長や糸の強さに優れているようです。この特徴を客観的に数値化し、ファーストコットンを1級、次回以降を2級などと分類して、ブランディングすることができないかを検討しています。これは手摘みでないとできませんからね。

11年から本格化した国産綿花栽培

 綿花だけでなく、副産物の活用もめどが付いてきました。岡村製油の協力で、種を絞った綿花油も抽出できました。酸化しにくい最上級クラスの油で、そうめんなどに欠かせないものです。兵庫県は「揖保乃糸」などそうめんの一大産地であり、うまくいけば特産品になるでしょう。兵庫県は卵も有名。綿花油を使ったマヨネーズもチャレンジしていきます。落ち綿を使った手すき紙、茎をチップ・パルプにした紙など、綿花はほとんど捨てる部分が無いほど、多様な活用が可能です。

 何より大事なのは、作り手がきちんと利益を出せる仕組み作りです。ボランティアでは規模の拡大は難しく、長続きしません。補助金に支えられている米や麦に比べ現状の綿花栽培は採算面で大きな課題があります。農林水産省、地元行政などへの働き掛けを続ける一方、まずはかこっとんで「ジャパン・オーガニック・コットン」のビジネスモデルを確立することです。綿花栽培に関わる方々が再生産できるだけの採算を確保する。休耕田を減らし、障害者を含めた多様な人たちが活躍できる場を作る。綿花が観光資源の一つになる…。夢は膨らみます。

 加古川の地場産業である靴下の活性化という点でも、最上級品としてかこっとんの綿花を位置付けています。「HYOGO SOX」プロジェクトも今年から本格化する予定です。

 まだ、今年の作付面積は1.2ヘクタールに過ぎません。とにかく加古川の地だけで100ヘクタールというのが当面の目標。私自身もかこっとんプロジェクトに継続して力を注いでいきます。

(繊研新聞本紙22年7月28日付)

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