大阪文化服装学院は3月14~19日、大阪中之島美術館で、初となる展覧会を開催した。美術館で展覧会形式の発信をした理由は「より多くの人にファッションビジネス(FB)業界におけるサステイナビリティー(持続可能性)の考え方を伝えたい」と考えたから。コロナ禍に突入してからの3年間、ファッション教育に欠かせないクリエイションを磨くことと、持続可能性のどちらも不可欠という視点で実現してきた作品を幅広くアピールした。
幅広い人に向け設定
展覧会のテーマ(タイトル)は、「Z世代のクラフトマンシップ展~ファッション×サステナビリティのお勉強」。ファッション業界以外の幅広い人にも、見て、考えてもらおうと設定にも工夫した。あえてサステイナビリティーは前面にせず、〝Z世代〟や〝クラフトマンシップ〟という言葉を活用し、幅広い人が関心を持つようなタイトルを意識した。観覧料も無料とした。
そして、ファッションは環境に優しくないというイメージを抱く人に対しても、ファッション業界における持続可能性への取り組みが、様々な形で進んでいることを知ってもらう機会になることを目指した。
実際に展示した作品は大きく五つのくくりで、どれも23年2月に同校が実施した卒業作品展からセレクトしたものだ。作品を手掛けた学生も会場に待機して応対し、求められれば制作の背景などを詳しく説明した。
様々な企業が協力
一つ目の作品が「『ホールガーメント』×3D技術の可能性」。無縫製ニットホールガーメントで無駄のない物作りをしたニット作品と、3Dモデリングソフト「CLO」を活用して作成したデジタル衣装とを連動して展示した。島精機製作所、FMB(東京)、TFL(同)の3社が協力した。
「皮革素材の可能性」では、本来は廃棄される食肉用動物の皮を利用。あえて色むらや傷のある皮革を使い、オリジナリティーがあって、耐久性の高い作品を見せた。リアルレザーとフェイクレザーのどちらもサステイナブル(持続可能)な側面があり、いろいろな考え方ができることも伝えようとした。協力企業はユニタスファーイースト(兵庫県姫路市)。
「フィッシュスキンの可能性」は、世の中にまだ浸透していないフィッシュレザーを活用した作品を制作。日本では魚の骨や皮などの9割が廃棄されているが、ブランド「tototo」(トトト)を展開するシンクシー(富山県氷見市)の協力も得て作品を具体化した。
「ユーズドデニムの可能性」は、ヤマサワプレス(東京)が協力し、同社がロサンゼルスで買い付けた「リーバイス」の「501」のユーズドストックをアップサイクルした作品を揃えた。22年春に共同プロジェクト「デニムdeミライ」で連携したのに続く取り組みになった。「廃棄着物の可能性」では、廃棄されるきものをアップサイクルした作品を展示。エムトレード(兵庫県明石市)が協力した。
クリエイションを同時にしっかり育む
大阪文化服装学院の加藤圭太サステナビリティ・ディレクター
コロナ禍は、当校がSDGs(持続可能な開発目標)について深く考える機会になりました。例えば、オリジナリティーが高いものや、作り手のこだわりが伝わるものであれば、そもそも捨てられずに大事にされるはず。
ただ単にサステイナブルな視点を取り入れるだけではなく、学生のクリエイションを同時にしっかりと育むことが大事だというスタンスで、教育を掘り下げてきました。どちらも重視したことが、企業や産地との接点や取り組みをこれまで以上に広げることにもつながりました。
(繊研新聞本紙23年3月30日付)