【ファッションとサステイナビリティー】繊維リサイクルのナカノ 回収・再利用のチェーンを構築

2024/06/14 05:29 更新


工場内には仕分け前の中古衣料が山のように積み上がる

 繊維リサイクルを手掛けるナカノは、神奈川県の秦野市と横浜市の2カ所にリサイクル工場を構え、自治体などから回収した中古衣類を仕分けし、再流通する事業に取り組む。工場の他に、国内に複数の事業所を持つ。国外ではフィリピンに工場が2カ所あり、日本から送られた中古衣料からウエス・軍手などの製品を製造する。

徹底した衣類選別

 国内の両工場には、1日に0~30トンの中古衣料が入荷する。季節や天候によって量が左右されるため、量の振れ幅は大きいという。

 選別は1日に約10トンをさばく。外部の古着バイヤーのピックアップを経た後、第1選別で家庭用繊維製品と衣料品、冬物の衣料に仕分ける。冬物は反毛原料になる。第2選別でトップ、ボトム、子供服、その他と形ごとに仕分ける。第3選別では形状・性別・素材・色などの状態を確認し、良品は海外輸出向けの古着として、汚れやダメージが大きい物はウエス向けに仕分ける。工場内には輸送のための圧縮梱包(こんぽう)の設備もあり、国内だけでなく国外に向けた流通拠点としても機能する。

 今年で創業90年を迎える同社は、「故繊維問屋」として創業。リサイクルという概念が浸透する前から故繊維の回収、再商品化の事業を手掛けてきた。かつては、ウールを中心とした製紙・ウエス製造・反毛が事業の中心だった。しかし、化学繊維の登場から大量生産化など時代の変化に合わせて、製紙と入れ替わる形で古着の扱いが新たな事業の柱として定着した。現在では、〝リサイクル品の商社〟として、繊維に関わる様々な業種から引き合いがある。

独自の製品も開発

 サステイナビリティーを重要視する同社は、中古衣料の回収事業にとどまらず、一貫したリサイクルチェーンの構築に注力する。回収した衣料を最適に流通させるための選別や、リサイクル品として使用される箇所まで管理するなどトレーサビリティー(履歴管理)も徹底する。

 そのほか、原料の7割に古着を原料とした特殊紡績糸を使用した軍手「よみがえり」(12双入りで税込み550円)などオリジナル製品も手掛ける。売り上げの一部は、自社工場のあるフィリピン・スービックの貧困層を対象に、安全な出産を支援するクリニックに寄付する。

情報発信で連携強化

 同社は自社工場の見学会も受け入れている。5月には「繊研サステイナブルコミュニティー」との共催で、セミナー・工場見学からなるフィールドワークを開催した。

 セミナーのテーマは「衣料品リサイクルの現状と課題」。ナカノの取り組みから、明治期の製紙を発端とする繊維リサイクルの歴史まで解説し、後半では中古衣料の選別作業現場を見学した。

 セミナー講師と工場案内を担当した藤田修司取締役は、日本古着リサイクル組合理事や東京都リサイクル事業協会監事を兼任し、外部への講演依頼などにも応じるなど、積極的な発信にも取り組んでいる。

 同社は、「経済(エコノミー)」と「環境(エコロジー)」の二つの「エコ」に「理念(フィロソフィー)」を加えた〝エコソフィー〟を提唱し、外部発信と合わせて繊維産業に関わる各社への呼びかけを進めている。循環型社会の実現に向けて、一貫したリサイクルチェーンの構築や、リサイクル製品開発などアパレル各社との取り組みを推進。自社の事業だけでなく、生産量の適正化など繊維業界全体の課題解決に貢献する。

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(繊研新聞本紙24年6月14日付)

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