【ファッションとサステイナビリティー】フルカイテン スーパーサプライチェーン構想 適量生産・適量消費に貢献

2023/11/27 05:27 更新


瀬川直寛社長

 サステイナブル分野においてスタートアップが市場を広げている。環境配慮型の革新的な素材やデジタル技術開発で、新たな需要を掘り起こしている。社会貢献と経済合理性を追求しながら新しい市場領域を創出することで、繊維・ファッション業界を活性化している。

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 「世界の大量廃棄問題を解決する」。これこそが究極の〝人の役に立ち、笑顔にする〟事業だと考えています。23年7月から「在庫配分」「在庫分析」「補充発注」のソリューションごとに分けて販売する、マルチプロダクト化の営業をスタートし、販売を大きく伸ばしています。

流通総額1兆円超

 17年11月にフルカイテンのファーストバージョンを提供して以降、シングルプロダクトとして複数の機能を合わせて販売してきました。しかし、22年ごろからセールスの相手先において、在庫課題の言語化が不明瞭で、新しい在庫分析システムの導入に慎重な姿勢を持った企業が増えてきました。そこで、ターゲットを絞った課題解決の機能を提供することで、より多くのユーザーを獲得することに成功しました。

「在庫配分」「在庫分析」「補充発注」に分けて販売するマルチプロダクト化の営業を始め販売を大きく伸ばした

 フルカイテンを利用するアパレル及び生活雑貨、スポーツ関連など全ブランドにおける年間累計流通総額は、23年12月までに1兆円を超える見通しです。サプライチェーンを小売り業態の川下から、メーカーや商社などの川中へさかのぼって販売・生産・在庫に関するデータを集約する「スーパーサプライチェーン構想」の具体化が着々と進展しています。

 ここで蓄積したデータは、市場全体を俯瞰できるようにデータサイエンスを活用してカテゴリー構成の分析を進めています。それによって、アパレルやシューズ、雑貨など品目ごとの需要予測が可能になります。このシステムを通じて、多くの企業が抱える在庫問題が解決できれば、世界中の衣料廃棄問題が解決できるとともに、資源の無駄遣いも削減できると考えています。

GMROI重視に

 サステイナブルに対する認識は海外に市場を持つ企業において、先進的な取り組みが進んでいます。一方、国内市場を主力に販売する企業は、まだまだ環境配慮への取り組みが遅れています。しかし、日本市場は少子高齢化し、人口は確実に縮小します。海外に向けて市場を広げなければ、存続は難しくなるのではないでしょうか。

 その意味において、サステイナブルな切り口や、仕組み作りをブランドとして打ち出すことは不可欠です。在庫問題を含む環境配慮に対する施策はもっと広げる必要があります。

 フルカイテンの提供価値は、「今ある在庫から多くの利益を生み出す」ことにあります。適量生産・適量消費の価値の実現を目指すことで、廃棄衣料品などから排出される二酸化炭素削減を推進することできると考えています。

 コロナ禍以降の繊維・ファッションビジネスでは、「どれだけの在庫で、どれだけの粗利を作ったか」を表す指標のGMROI(商品投下資本粗利益率)を重要視する流れが大きくなっています。在庫過多を避けるこの潮流は、繊維・ファッションビジネスをサステイナブルな産業に転換する上で非常に重要だと考えますし、そこに貢献することがフルカイテンの社会的役割だと確信しています。

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(繊研新聞本紙23年11月27日付)

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