渋谷・原宿エリアにショップを構える六つのブランドが5月19~21日、合同でリペアイベント「ドゥ・リペアーズ」を開催した。参加したのはアウトドアブランド中心で、「パタゴニア」「ザ・ノース・フェイス」「フライターグ」「ヘリーハンセン」「アークテリクス」「ミステリーランチ」。スタッフが互いの店舗に常駐し、ブランドを問わず修理の要望などに対応した画期的なイベントで、グローバルで見ても同様の企画はないという。競合同士がなぜ手を組み、どう実現したか。イベントの推進メンバーの一人、パタゴニア日本支社の平田健夫サーキュラリティディレクターに聞いた。
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――開催の経緯は。
ブランドをまたいでリペアの価値を伝えることができれば、社会に対してよりインパクトを出せるのでは――。パタゴニア日本支社では19年に、「パタゴニア東京・渋谷」店で中古品販売イベントをやったのですが、その後、店舗スタッフからこんな提案があったのが、イベントのきっかけです。
そこで(同じ渋谷・原宿エリアに店舗を構え)修理やリセール事業を担当するゴールドウインの方とやり取りする機会があった際、この話をしたら、二つ返事でOKをもらえ、2社で具体化に向けて話し合いを進めました。その後、店舗内に修理工房を備え、ストアのスタッフ同士がつながっていたフライターグも加わり、22年10月に試験的に3ブランドでリペアイベントをやってみたのです。
今回はその2回目となります。趣旨に賛同するブランドは6に増え、イベントタイトルと案内に使用するグラフィックを作り、告知にも力を入れました。6ブランドの関係者が集まって半年間で延べ10回ほどミーティングを重ね、テーマ別に分科会も設けて、みんなで作り上げました。
――改めてイベントのコンセプトを。
メンバー間では、ファッションの発信地であり、一大消費地でもある渋谷・原宿エリアから、「モノを大切にして、長く使うことの価値を発信しよう」という共通の認識を持っています。ゆくゆくは、渋谷・原宿が、〝サーキュラー〟コンセプトを発信できる街になることを、長期的なビジョンに掲げています。
――競合にもかかわらず、なぜ企画を実現できたのか。
渋谷・原宿エリアに店舗が集まっているからこそできたと思っています。集積している利点を生かし、モノとは別の価値を発信できました。実は会期中、パタゴニア本国のウォーンウェア(修理プログラム)担当者がプライベートで偶然店舗に来ていたのですが、「アメリカでも競合とここまでやった事例はない」と驚いていたのが印象的でした。
――手応えと今後は。
各社のリペアに対する考え方の違いが分かりました。例えばウェアの破れた箇所を縫製修理する場合、パタゴニアではそれがアクセントになるようあえてウェアとは別の色のあて布を使うことが多いのですが、ザ・ノース・フェイスでは元々の形に戻すことを基本としています。互いにそれぞれの有効性や利点を知ることができ、良い意味での気付きや刺激を得たのが収穫ですね。
今後はまずこのイベントを継続していくことが大事です。半年に一度のペースを維持しながら、趣旨に共感してくれるブランドを少しずつ増やしていければと思っています。
(繊研新聞本紙23年6月15日付)