4~6月は環境問題やサステイナビリティー(持続可能性)に関連した重要なイベントが目白押しのシーズンだ。今年は新型コロナウイルスの影響で多くのイベントが中止になったが、4月は地球環境を考える「アースデー」(4月22日)、バングラデシュの縫製工場が倒壊し大勢の死者を出した日に由来した「ファッション・レボリューション・デー」(4月24日)、フェアトレード(公正取引)をアピールする「世界フェアトレード・デー」(5月第2土曜日、5月は世界フェアトレード月間)などがあった。
繊維産業に関連が深い日として「コットンの日」(5月10日)もあった。コットンは衣料品の素材の約3割を占め、世界中で栽培・使用されている。天然繊維で地球に優しいイメージがあるが、その生産だけを見ても、強制労働や児童労働、農薬や化学肥料の使用による土壌への影響や農家の健康被害、小規模農家の貧困問題など多様な問題を抱える。コットンを持続可能なものへ変革しようと、英国NGO(非政府組織)のフォーラム・フォー・ザ・フューチャーが「コットン2040」を立ち上げた。
団体やブランド束ねて
持続可能なコットンの使用や普及を目指すイニシアチブや団体は数多く存在する。コットン2040はそうしたイニシアチブや団体、使用するブランド・企業と連携を取り、サステイナブルコットンの普及の促進を目指す。日本ではザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)がパートナーを務める。
コットン2040は20~22年にかけて、①気候変動を理解し、適応するためのセクター全体の協働の創出②ブランドや小売業者からのサステイナブルコットンの取り込み・使用の増加③持続可能なコットン産業を可能にする持続可能なビジネスモデルの拡大の三つのワークストリームを提供。それに沿って、サステイナブルコットンが世界の主流になるよう変革を推し進める。
プロジェクトディレクターのシャーリーン・コリソンさんは、「コットンは繊維産業全体の中でもかかわる人が多く、影響力の大きな産業。農薬や化学肥料による環境や生産者への影響も大きい。そのコットンがサステイナブルになることの意味が大きい」とコットンに注目した理由を話す。
コットン2040によると、15~16年のサステイナブルコットンの比率は12%。19年には25%に上昇した。25年までに使用するコットンを100%サステイナブルコットンに切り替えると表明するグローバル企業もある。「どの企業も20%までが大変だが、その水準を超えると改善のスピードが上がる」とコリソンさんは話す。
コットン2040はサステイナブルコットンを調達する上での問題やメリットなどの情報を提供する実践的な資料や情報を「コットン・アップ・ガイド」として提供している。3月末には日本語版サイト(http://cottonupguide.org/ja/)も公開した。
新型肺炎の影響も
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、コットン産業や、コットン2040の活動にも影響を及ぼしている。サプライヤー工場に対してオーダーのキャンセルをする企業も出ている。工場労働者の安全性への配慮も不可欠だ。サプライチェーンの上流にいる農家にとっても、コットン需要の減少による価格の下落が収入減をもたらすなど影響が広く及ぶことが懸念される。売り上げ減によりブランドの活動がスローダウンすることで、サステイナブルコットンの普及のスピードが遅れる可能性もある。ただしコットン2040では「三つのワークストリームや活動の方向性は変えない」と、長期的な視野で活動を推進しようとしている。
「サステイナビリティーは倫理やCSR(企業の社会的責任)という意味だけではなく、中長期的な視点でビジネスを実施すること。四半期ごとの収益ではなく、5年後、10年後、15年後に、何をどうするか、考えなければならない」とコリソンさんは指摘する。素材の選択やサプライチェーンの課題解決には、中長期のビジョンに基づくアクションが求められる。
(繊研新聞本紙20年5月28日付)