繊研新聞社による「第5回ファッションECアワード」は、コロナ禍の終息を見据え、OMO(オンラインとオフラインの融合)推進での施策が光るサイトが票を集めた。サポート企業は、クッキーレスへの対応や、動画の取り込みといったマーケティング面での新たな潮流を捉えたサービスが受賞した。
エクセレント賞は、「ドットエスティ」と「ユニクロオンラインストア」。フォーカス賞は「タビオオンラインストア」と「ユナイテッドアローズオンライン」。サポート賞は「アウーAI」と「ビジュモ」が受賞。
これらの賞は、ファッション企業やITベンダー合計約100社からのアンケートを元に選出。サイトの構築・運用で優秀・注目されるファッション直営ECサイトと、サイトへの集客・売り上げ増・効率運営を支援するITサポート企業を表彰するもの。なお、3年連続で受賞、今回も高評価を得た「スタッフスタート」を初の殿堂入りとした。
エクセレント賞
「ドットエスティ」(アダストリア) 優れたUI・UX
「ドットエスティ」(アダストリア)は昨年に引き続き受賞した。検索のしやすさや音声入りレビュー動画の導入、着用画像で身長別の丈の長さを見せるなど、UI・UX(ユーザーインターフェイス・ユーザーエクスペリエンス)の高さが評価された。
昨年から二宮和也さんを起用したテレビCMを放映し、さらなる認知向上に注力している。注目のOMO施策では、昨年5月に出した「ドットエスティストア」を現在5店まで拡大した。スタッフのスタイリング画像「スタッフボード」のデジタルサイネージやEC購買の受け取りサービスなどを利用する客が多い。今春から他社ブランドの商品も本格的に販売していく。直近ではキッチン家電「シロカ」や美容家電「ヤーマン」の扱いを始めた。
「ユニクロオンラインストア」(ユニクロ) 相互送客に高評価
「ユニクロオンラインストア」(ユニクロ)は、2年ぶり2回目のエクセレント賞受賞となった。新たな機能を積極的に取り入れながらも、初心者にも分かりやすいUI・UXを徹底している点にかねてから定評がある。今回はさらに、「オンラインと店頭との相互送客がうまい」「在庫確認や店頭受け取りなどOMO推進の完成度」といった、店舗連動の仕組み作りや成果を改めて評価する声が多かった。店舗受け取りに関してはさらに進化させ、21年10月から、注文から最短2時間で店舗での商品受け取りができるサービス「オーダー&ピック」を導入し、利便性を高めている。また、EC、アプリ会員から集めた消費者の声を元にした商品開発にも力を入れている。
フォーカス賞
「タビオオンラインストア」(タビオ) 生産までつなぐSNS活用
「タビオオンラインストア」(タビオ)は初受賞で、「商品企画、商品説明、販促」「ビジュアル表現が優れている」「新システムの積極的な導入」などが評価された。22年2月期の自社EC売上高は10億3100万円(前期比41%増)。越智勝寛社長自らが指揮を執り、SNSを積極的に活用したOMO戦略が軌道に乗り始めている。ツイッターで情報を発信し、〝バズった〟商品は即座に生産を手配。関連動画を作成してユーチューブで配信し、店頭ではデジタルサイネージで同じ動画を流し、その隣に商品が並ぶという流れを磨く。独自の国内サプライチェーンが大きな強みで、店舗、本社、ニッターが生産・販売情報をリアルタイムで共有し、迅速に対応している。
「ユナイテッドアローズオンライン」(ユナイテッドアローズ) サイト刷新で注目
「ユナイテッドアローズオンライン」(ユナイテッドアローズ)も初受賞。今年3月2日に実施した自社ECのリニューアルに着目した推薦コメントが集まった。「OMOやCX(顧客体験)を意識した最先端の作りになっている」との先進性が評価されている。また、ウェブサイト上で各ブランド・レーベルの情報を整理し、見やすく、探しやすいデザインと設計に変更しており、「自社サイトのモール構成が参考になる」との意見も見られた。リニューアルを機に、スマートフォンアプリも一部機能を改修しており、スタッフのスタイリング投稿やブログ、コンテンツの発信機能を付与。コミュニケーションツールとして接客にも役立てられるようになった。
サポート賞
「アウーAI」「ビジュモ」 データ活用しCX向上
AI(人工知能)マーケティングソリューションの「アウーAI」は、画像や説明文からAIが商品特徴を抽出しハッシュタグやランディングページを自動生成、ECが不得意な「偶発的な消費」を促す。「人的リソースを一切使わずにSEO(検索エンジン最適化)・CVR(購入率)ともに改善できる」ことなどが評価された。ユーザーは、気になるハッシュタグをクリックすれば、これまで知らなかったお気に入り商品と出会うこともできる。
またトラッキング技術によらず、商品データを基に顧客の購買動機を推定するため、クッキーレス時代のマーケティングツールとしても期待を集める。非ログイン・初回訪問ユーザーにも最適なレコメンドが可能だ。
ビジュアルマーケティングプラットフォーム「ビジュモ」はブランディングや商品訴求を強化するビジュアルデータを一元管理して有効活用できる。①インスタグラム上のUGC(ユーザー生成コンテンツ)活用②ECサイト上の動画コマースの推進③アンバサダーやスタッフが投稿を強化するツール④ノーコードで商品ページを充実させるCMS(コンテンツ管理システム)――といったサイトコンテンツ充実を簡単に実現できるソリューションを提供している。国内約500社が導入しており、「無意識に〝見る〟ことから顧客体験を生み出す」ものだ。「UGCやインスタグラムのコンテンツを自社サイトに連携・反映できる」ことが高く評価された。
今回も様々なデータを活用してCX(顧客体験)を向上させるソリューション・サービス群が多くの回答を集めた。
アウーAI、ビジュモもそのグループに入るが、多くは顧客データを活用しワン・ツー・ワン・マーケティングを実行するツールだ。今年も多くの評価を得た「カルテ」や「ビーダッシュ」「セールスフォース・サービス・クラウド」などは、オフラインも含むデータを統合・活用する。
今年初めて回答があった米国発のユーザー行動分析「アンプリチュード」も同じだ。多くの回答を集めた「ショッピファイ」にもOMO推進への期待がある。
その中で、クッキーレス時代のマーケティングを求める動きが顕著で、アウーAIを上位に押し上げた。顧客データを活用するツールも自社のファーストパーティーデータ活用や個人を特定しないセグメント手法が目立っている。
また、動画活用も大きなニーズがあり、ビジュモへの期待もその表れだ。スウェーデン発のライブコマースツール「バンブーザー」への関心も高まっている。
「スタッフスタート」殿堂入り果たす
「スタッフスタート」(バニッシュ・スタンダード)は、過去3年での連続受賞に加え、「訪問ユーザーの約半数が利用」「スタッフコーデによるオムニ強化につながる」と今回も高評価を得た。
昨年は、繊研賞も受賞。継続的に業界の発展に貢献しているサービスとして殿堂入りとなった。
《アンケート協力企業》
アイジーエー、アウージャパン、AOKI、青山商事、アダストリア、アツギ、アッシュ・ペー・フランス、石川商店(ISHIKAWA-LABO)、ecビーイング、イトキン、AMS、エース、SCSKプレッシェンド、SBペイメントサービス、F・O・インターナショナル、エフ・ディ・シィ・プロダクツ、岡本、オギツ、小田急百貨店、川辺、キング、栗原、クロシェ、クロスプラス、グンゼ、ケイ・ウノ、京王百貨店、ゴールドウイン、サマンサタバサジャパンリミテッド、三陽商会、ジーンズメイト、JR西日本SC開発、ジオン商事、ジグザグ、シップス、ジャヴァコーポレーション、シャルズ、ジュン、ジョイックスコーポレーション、白鳩、スタージュエリー、スタイリングライフ・ホールディングス・プラザスタイルカンパニー、ストライプインターナショナル、スプリング・オブ・ファッション、セキミキ・グループ、ゼータ、ゼビオコーポレート、セレクト、そごう・西武、大丸松坂屋百貨店、高島屋、タビオ、ダブルエー、タンジェリン、チュチュアンナ、土屋鞄製造所、TSIホールディングス、東急百貨店、東京ソワール、トランスコスモス、ナイガイ、ニットプランナー、ハニーズホールディングス、バニッシュ・スタンダード、パル、パルコ、パレモ、バロックジャパンリミテッド、阪急阪神百貨店、ビービーエフ、ビームス、ヒロタ、ファーストリテイリング、ファッション・コ・ラボ、ファッション須賀、フェスタリアホールディングス、福助、フューチャーショップ、ブランシェス、フリーインターナショナル、プリモ・ジャパン、フルカイテン、プレイド、ベイクルーズ、HEAVEN Japan、マッシュホールディングス、松屋、三起商行、三井不動産、三越伊勢丹、ミルク、ムーンバット、メイキップ、山喜、ヤマトインターナショナル、ユナイテッドアローズ、ランチェスター、ルックホールディングス、ルミネ、レリアン、ワークマン、ワコール。(50音順)
ウェビナーを配信予定
6月23日に【繊研主催】ファッションECサミット-第5回ファッションECアワード記念講演-としてウェビナーを配信予定。