【連載】エグゼクティブキャリア新市場④

2018/12/09 06:29 更新


仕掛けるアパレル㊤ 三陽商会 「ポール・スチュアート」 まずは種まきの時期

 「国内の就労人口の約10%が、企業内での役職を上げていきたいと考えるキャリア志向を持つ女性という調査結果がある」と指摘するのは三陽商会の嶋﨑浩二事業本部ポール・スチュアートビジネス部婦人服企画グループ長。「今は、この着実な成長性が見込める市場への種まきの時期」として提案を強化する。

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悩みに応える

 「ビジネスシーンでは部下や上司から見られることを意識する。〝身の回りの360度〟の人たちに好印象を与える、的確な着こなし提案が求められている」(嶋﨑グループ長)。その一つとして顧客層の女性管理職を対象に、「ポールスチュアーツエグゼクティブウィメンズセミナーシリーズ」を17年2月から定期的に開いている。

 今年10月で4回目で、ファーストシリーズのジャケットやコート、バッグなどを提案。スタイリストの犬走比佐乃氏を講師に、「シーン別ジャケットの着こなし方」セミナーも行った。ビジネスシーンの服装やメイク、アクセサリーの活用など〝装いのイメージ戦略〟をサポートする内容で、ブランドファンの着実な拡大に取り組んでいる。

夏は実用性重視

 ポール・スチュアートは18年春夏でジャケットの売上高を前年比で12%増、バッグは2倍に伸ばした。18年春から本格化したパターンオーダーも50%増。ジャケットのヒット要因は、〝夏の作業ジャケット〟の強化にある。ファーストジャケットがビジネスシーンの〝勝負服〟とすれば、作業ジャケットは機能性を追求した利便性の高い商品。毎日着る分、着心地の良さが欠かせない。夏場は発汗などによる汚れが気になるためイージーケア性も求められる。

 このためジャージーによるウォッシャブル機能のあるジャケットを開発し、18年夏に大きく広げた。中心価格は3万9000円とし、ファーストジャケット(7万9000円)と比較してリーズナブルで、買い替え需要を喚起した。

 ファーストバッグも人気商品。女性らしい丸みを帯びたシルエットながら「A4サイズの書類に適応するファイルが入る」仕様など、メンズバッグの機能が随所にあり、実用性を重視している。

部下や上司から見られることを意識した装いの提案を強化する

 スーツのパターンオーダーは今秋から全国38店に拡大。選択できる生地の種類も、これまでの20から30に増やした。「エルメネジルド・ゼニア」「ロロ・ピアーナ」などの高級生地を使うプレステージ企画から、尾州産によるレギュラー企画まで上質な生地から選べる。採寸箇所は着丈、袖丈だけでなくバスト、ウエスト、裾回り、ヒップなど横幅のパターン調整にも対応。上下セットアップで10万4000~24万3000円。今後もレディススーツのパターンオーダーをブランドの成長分野の一つと位置づけ、拡大を狙う。

(繊研新聞本紙11月2日付)



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