【知・トレンド】《入門講座》中小企業と事業継承② カギは年齢、業績、子供
連載の第2回は、当研究所が15年に実施した「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」の結果を用いて、事業承継の現状について概観します。
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まず、後継者の決定状況を確認しておきましょう。前回紹介したとおり、「決定企業」(後継者は決まっている)は12.4%にすぎません。「未定企業」(事業承継の意向はあるが、後継者が決まっていない企業)は21.8%、「時期尚早企業」(自分がまだ若いので、今は決める必要がない)は15.9%となっており、残る50.0%が「廃業予定企業」(自分の代で事業をやめるつもりである)です。
次に、廃業予定企業の占める割合を従業者規模別にみると、「1人」(本人のみ)の企業では77.0%に上りますが、規模が大きくなるにつれて低下する傾向にあります。この割合は「2~4人」では56.5%となり、「50~99人」では16.1%、「100~299人」では5.4%にとどまります。
廃業予定企業の廃業理由をみると、「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」が38.2%と最も多く、次いで「事業に将来性がない」が27.9%となりました。これに続くのが、「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」という後継者難に関する理由で、三つを合わせて28.5%となりました。
では、どのような要因が、決定企業、未定企業、廃業予定企業の三者を分けるのでしょうか。三つほど挙げます。
一つ目は、経営者の年齢です。決定企業の経営者は、未定企業よりも年齢が高い傾向にあります。廃業予定企業は、決定企業と未定企業の中間にあります。年齢を重ねるなかで、ある企業は後継者を決め、ある企業は廃業を決めることになります。いずれの道を選ぶにせよ、最終的には、後継者未定という割合は減っていくわけです。
二つ目は、業績です。同業他社と比べた業績を尋ねたところ、「良い」または「やや良い」と答えた企業の割合は、廃業予定企業で30.6%と、決定企業(62.1%)や未定企業(56.5%)に比べて明らかに低くなっています。業績が悪いと、苦労をかけてしまうことを懸念し、後を継がせることに二の足を踏むのでしょう。
三つ目は子供の人数です。男の子どもの平均人数をみると、未定企業の0.95人、廃業予定企業の0.75人に対して、決定企業は1.17人と多いことがわかります。女の子供の人数も同様の傾向にあります。
決定企業における後継者をみると、男の実子が61.3%、女の実子が12.1%で、子供が7割以上を占めます。一方、親族以外は15.5%と少数派。子供がいない、あるいは継がない場合の対策が、事業承継を進める上で一つのカギとなりそうです。
(藤井辰紀日本政策金融公庫総合研究所グループリーダー)
(繊研新聞本紙2018年11月19日付)