クロスディーズ・ジャパン 3D技術で〝走れるパンプス〟

2021/01/20 06:25 更新


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 本革のオーダーパンプスを製造・販売するクロスディーズ・ジャパン(東京、諏訪部梓社長)は、もともとIT技術者だった諏訪部さんが19年12月に設立した新興企業。立体計測したデータを使い3Dプリンターで木型を自動作成し、職人が手作業でパンプスに仕上げる。「ぴったりサイズで走っても脱げない」のが売り。都内のオフィスで受注から生産まで行うが、今年からは採寸できるデバイスを地方の店や客に送る計画だ。「札幌のお客さんのデータを元に東京で木型を作り、九州の靴職人に製作を委託するようなエコシステムが作れれば」(諏訪部さん)という。

(永松浩介)

パンプスに可能性

 高専在学中にロボットコンテストで全国ベスト4にまで残ったこともある諏訪部さんは大学卒業後、ITコンサルタントとして約10年働いた。2010年代になり、個人が物作りする「メーカーズ」ブームやドイツの「インダストリー4.0」の考え方に刺激を受け、転身を決意。IT×物作りの世界に飛び込んだ。

 数年前、知人女性と話していた時にパンプスに可能性を見いだした。「働く女性は世界的にも増えているし、着用頻度が高いアイテム。だけど、足を覆う面積が少ないため、ぴったりサイズでなければストレスは多い。需要はあるはず」。靴の勉強をし、早速3Dスキャナーの開発に取り掛かり、オーダーメイドパンプスに3D技術を融合させた新サービスを20年2月に始めた。

3Dプリンターで木型を作成。材料は植物由来のPLA樹脂(ポリ乳酸)を使う

 客は同社のオフィスで3D採寸し、データを3Dプリンターに読ませて木型を作る。6台のプリンターを駆使してパーツごとに作成するが、「4台使っても7~8時間はかかる」という。木型を元に、2人いる熟練の縫製士が最終製品にまで仕上げる。爪先の形や履き口、ヒールの形状・高さに加え、49色ある革を掛け合わせると6400万通りの靴作りが可能になる。納期は約1カ月だ。

仕上げは職人の手仕事

 現在、主流のサービスは1年契約のサブスクリプション(継続課金)型で、月額5000円。12カ月で所有権は移転するため、実質6万円。高いととるか安いと感じるかはユーザー次第だが、木型代は無料で、サブスク期間はヒールリフト(底)の交換や中敷き交換、傷の修理などが無料で受けられる。サブスク期間が過ぎても廉価でサービスは受けられる。

組み合わせは6400万通りに及ぶ

新アイテム作りも

 同社のオフィスでの採寸だけだと広がりが限定的なため、今年からは地方など客の要望があれば採寸スキャナーと専用アプリ(ベータ版)を備えたiPadや革見本を送るサービスも始める。客が採寸データと色や形状を選べば製作に入り、約1カ月で納品する。

 さらに、全国の靴専門店にも同様にiPadを置いてもらい、店頭受注するサービスの立ち上げも構想。同時に、縫製や製甲の仕事を全国の職人に振ることで、それぞれの仕事が成り立つエコシステムを作り上げたいと考えている。「木型さえあればどこでも作れる。職人ブランドも出来るかもしれない」。ネイルサロンなど女性が集う実店舗なども対象になると踏んでいる。

 もっとも、サービスを始めたばかりで知名度向上はこれからだ。「20年10月の受注は前月の2.8倍となったが、まだまだ」と諏訪部さん。SNSの運用やネット広告への出稿もしているが、今後は期間限定店などオフライン出店でも認知度を高めたい考え。「ミシンや3Dプリンターを持ち込んで実演すれば興味を持ってもらえるのでは」

 木型に貼ったテープから型紙を作る、いわば3次元を2次元に戻す作業も手間がかかるし、仮に受注が急増した場合の生産能力には限界があるという。生産に関しては外部企業との協業も一部で始める。

 それでも、「(客が)履いた瞬間に驚くぐらいのぴったりパンプス」に可能性を感じており、サービス拡大に意欲を高める。パンプスが軌道に乗れば、3Dプリンターが生きる、まだ市場で解決できていないニッチなアイテムで横展開していきたいと考えている。「手袋とかゴルフシューズとかどうですかね」。これまで自前資金で回してきたが、今後は資金調達も考えているという。

IT技術者だった諏訪部社長

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